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2020.03.27 | 建築

私の好きな”かたちと風景” ⑰セメント工場を走り抜ける 大分県津久見市

私の好きな “かたちと風景” ⑰セメント工場を走り抜ける 大分県津久見市

大分空港からバスとJR特急を乗り継いで約2時間で津久見駅に着く。筆者は、津久見にはみかん貯蔵庫の見学に訪れたのだが、今回は「かたちと風景」を町の風景に見てみたい。

津久見は、大きく3つの顔がある。建築系の人には、「セメント町」という地名があるように、太平洋セメントや大分太平洋鉱業など鉱業系の産業の町。農業系の人には、みかんの町、農産物の産業の町。漁業系の人には、遠洋マグロの保戸島や養殖の豊後まぐろ「ヨコヅーナ」などのマグロの町、漁業系の産業の町である。鉱業は採掘があるので、いずれも一次産業という点では共通するが、そこに立ち現れてくる様相はまったく違う。

鉱業は、沿岸部を這うようにして発展し、周囲に企業城下町が発展したので、住宅地まで侵食するようにして組み込まれている。農業は、山の斜面を石積みの段畑とし、石造や練塀のみかん貯蔵小屋が建つ。漁業は、海である。みかんは地形と日射、貯蔵には海風を利用し、セメントは地質と地形、漁業は地形と対峙する海で育まれる。すべての生業は、かつての人々が活動できる範囲で連関しあってきたことがよくわかる。

津久見は、工場好きには大興奮の世界がある。大規模な工場は、許可を取ろうにも取れない、仮に入ることができても機密だらけで写真を撮ることも許可されない、そんな世界である。それだけに、憧れを抱くし、沿岸部から見えるテクノスケープは人気となる。その点、津久見はすごい。東西に走る日豊本線と並行する県道217号線を「セメント町」付近から北に抜けて行くと、工場内を移動しているような疑似体験ができる。私は、そう思い興奮した一人である。

実際の迫力は写真以上だが、車窓からこの風景を望めるのは驚きである。特に、この辺り(座標:33.084364, 131.85501)からは圧巻で、ストリートビューを見るとよくわかる。途中で県道707号方面に折れて海に向かい、戸高鉱業社などの複数の企業の工場を横目に進むと、津久見市竪浦からは対岸に太平洋セメントの工場群を望むことができる。竪浦地区には、展望スポットも設けられている。この辺りは、みかんの産地である。工場景観を望みながら、同じ一次産業から出発したもののアウトプットの対比を感じながら、みかんを食すというのもいいだろう。みかん貯蔵庫も素晴らしいが、機会を改めることにしよう。

協力:大分県建築士会、大分県建築士会津久見支部

 

 

 

博士(工学)、有限会社花野果 代表取締役
二村 悟 Satoru Nimura

受賞歴:O-CHAパイオニア学術研究奨励賞 受賞、第47回SDA賞 サインデザイン奨励賞・九州地区賞特別賞 受賞、第5回辻静雄食文化賞 受賞ほか
静岡県掛川市 (旧大東町) 生まれ。博士(工学) (東京大学)。
東海大学大学院博士課程前期修了。元・静岡県立大学食品栄養科学部 客員准教授。
現在は、有限会社花野果 代表取締役、専門学校ICSカレッジオブアーツ 非常勤講師、日本大学生物資源科学部森林資源科学科 研究員・非常勤講師、工学院大学総合研究所 客員研究員。
主な著書:水と生きる建築土木遺産 彰国社 2016、日本の産業遺産図鑑 平凡社 2014、食と建築土木 LIXIL出版 2013、図説台湾都市物語 河出書房新社 2010
花野果 HANAYAKA https://tatemonoxxx.amebaownd.com/

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