推薦映画の紹介

ハウ

8月19日(金)より、 全国にて公開
©2022「ハウ」製作委員会
8月19日(金)より、全国にてロードショー
2022年/日本/118分  配給:東映
<公式サイト>

婚約者にあっさりフラれ、人生最悪な時を迎えていた市役所職員・赤西民夫。横浜で一人空虚な日々を送る彼は、上司からの勧めで、飼い主に捨てられ保護犬になってしまった真っ白な大型犬を飼うことになる。犬はワンと鳴けず「ハウッ」というかすれた声しか出せない。とびっきり人懐っこいこの犬を、民夫は“ハウ”と名付け、1人と1匹の優しくて温かい日々が始まった。民夫にとって最初は戸惑うことも多かったハウとの暮らしだったが、何をするにもいつも一緒な“2人”の絆は次第に深まり、いつしかかけがえのない存在となっていった。ハウと民夫の最高に幸せな時間はずっと続くと思っていたのだが……。
日本アカデミー賞受賞監督・犬童一心と、同賞脚本賞を受賞した斉藤ひろしがタッグを組んだ新たな感動作。

  • 渡辺俊雄(元NHK衛星映画劇場 支配人)
     「ハウ」は犬の名である。前の飼い主から虐待を受けて声帯を失い、「ワン」とは鳴けず「ハウ」となってしまう。田中圭が演じた主人公は冒頭で婚約者から別れを告げられ絶望の中、新築の一軒家で一人暮らしとなる。そこへ保護犬として迎えられたのがハウだ。こうして不器用で孤独な主人公と傷ついた犬は深い愛情で結び付く。しかし、ある日、ハウが突然姿を消してしまい、必死で探すが見つからない。想像以上に遠くへ連れて行かれたからだ。ここから、ハウの長い旅が始まる。
     この旅の途中で展開するエピソードは、今、日本で現実に起きていることばかりだ。福島の原発で故郷を追われた少女が受ける差別やいじめ、地方都市で広がるシャッター商店街、家庭内暴力から逃れた女性を救うシェルターなど。「ワン」と鳴けない犬ハウは各地の人々の心を癒やしながら、愛する飼い主の元へと無事に帰れるのか……。「もう一度、君に会いたい」と強く願う互いの思いが切ない。 石田ゆり子の優しいナレーションが心地よい。映画が終わった後も、ハウが何かを伝えようと必死に絞り出すように発する「ハウ」という声がずっと耳に残った。

ぜんぶ、ボクのせい

8月11日(木・祝)より、 全国にて公開
©2022『ぜんぶ、ボクのせい』製作委員会
8月11日(木・祝)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
2022年/日本/121分  配給:ビターズ・エンド
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児童養護施設で暮らす13歳の中学生、優太は、施設でも学校でもいじめられ、いつも一人ぼっち。自分を理解してくれる大人もいない。母・梨花が迎えに来てくれることだけを心の支えに毎日を過ごしているが、一向に現れず不安を募らせていく。そんなある日、偶然母の居場所を知った優太は、会いたい一心で施設を抜け出し、地方に住む母のアパートを訪ねる。ようやく再会するも、同居する男に依存し自堕落な生活を送る母は、優太に施設へ戻ってほしいと頼むのだが……。
国内外の映画祭で話題を呼んだ『Noise ノイズ』(2019年)の駿才・松本優作が、監督・脚本を手掛けた、力強い語り口と鮮烈な映像で少年と孤独を抱えた人々の交流を描き出す衝撃作。

  • 坪田秀治(日本商工会議所 参与)
     児童養護施設で母の迎えを待ちながら暮らす13歳の少年(白鳥晴都)。ある日、偶然母の居場所を知った少年は、施設を抜け出し母の元へ向かうが、そこには少年の居場所はなかった。絶望した少年は、軽トラで暮らすホームレスの男(オダギリジョー)と出会い、2人は寝食を共にするようになる。その男の元に時々遊びにやって来る裕福な家庭で育つも、家にも学校にも居場所のない女子高校生(川島鈴遥)とも顔見知りに。3人は心の通じ合う穏やかな関係を続けるが、ある事件によって終わりを告げる……。
     子育て放棄、難民高校生は深刻な問題であるが、そうならざるを得なかった少年少女がホームレスの男を介して人間としての純粋な心を通い合わせる描写がとても安らぎを与えてくれる作品。

プアン/友だちと呼ばせて

8月5日(金)より、 全国にて公開
©2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.
8月5日(金)より、新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、
渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー

2021年/タイ/129分  配給:ギャガ
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ニューヨークでバーを経営するボスの元に、タイで暮らすウードから数年ぶりに電話が入る。白血病で余命宣告を受けたので、最期の頼みを聞いてほしいというのだ。バンコクに駆け付けたボスが頼まれたのは、元カノたちを訪ねる旅の運転手。カーステレオのカセットテープから流れる思い出の曲が、2人がまだ親友だった頃の記憶を呼びさます。かつて輝いていた恋への心残りに決着をつけ、ボスのオリジナルカクテルで、この旅を仕上げるはずだった。だが、ウードがボスの過去も未来も書き換える〈ある秘密〉を打ち明ける―。
巨匠ウォン・カーウァイが心酔した稀有なる才能『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のバズ・プーンピリヤ監督最新作。サンダンス映画祭・ワールドシネマドラマティック部門クリエイティブ・ビジョン審査員特別賞受賞作品。

  • 大黒 昭(株式会社アスピカ 会長)
     母国タイで初登場第1位に輝いた作品。主人公はタイに住む白血病で余命宣言を受けたウード。彼はニューヨーク時代に知り合った元恋人たちにそれぞれ別れのあいさつをするべく、ニューヨークでバーを経営する親友のボスに案内を頼む。ボスの運転で三者三様の再会を果たしたウードは、ボスとも関係のあった女性プリムについてある秘密を語り出す……。
     この後半の展開がエキサイティングでこの映画のクライマックスともいえる。本作が大好評を博したゆえんも分かる。

アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台

7月29日(金)より、 全国にて公開
©2020 – AGAT Films & Cie – Les Productions du Ch’timi / ReallyLikeFilms
7月29日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、
新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー

2020年/フランス/105分  配給:リアリーライクフィルムズ
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囚人たちの為に演技のワークショップの講師として招かれたのは、決して順風満帆とは言えない人生を歩んできた役者のエチエンヌ。彼はサミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』を演目と決め、訳あり、癖ありの囚人たちと向き合うこととなる。エチエンヌの情熱は次第に囚人たち、刑務所の管理者たちの心を動かすこととなり、難関だった刑務所の外での公演にこぎつける。しかし思いも寄らぬ行動を取る囚人たちとエチエンヌの関係は、微妙な緊張関係の中に成り立っており、いつ壊れてしまうかもしれない脆さを同時に孕んでいた。ところが彼らの芝居は観客やメディアから予想外の高評価を受け、再演に次ぐ再演を重ね、遂にはあの大劇場、パリ・オデオン座から最終公演のオファーが届く!果たして彼らの最終公演は観衆の歓喜の拍手の中で、感動のフィナーレを迎えることができるのだろうか?
『マドモワゼル』や『灯台守の恋』などの名脚本家としても知られるエマニュエル・クールコルの監督第二作。度重なるロックダウンの中、2021年9月にようやく劇場公開されると、ポックスオフィス初登場第二位のスマッシュヒットを記録した名作。

  • 浅香光健(演劇舞踊浅香流 名取)
     囚人たちの演技指導者として招かれたのは崖っぷちの人生を歩んできた役者のエチエンヌ。彼は名作「ゴドーを待ちながら」を演目に決めて、訳あり癖ありの囚人たちと向き合う。エチエンヌのセリフ指導から始まる情熱は囚人たち、刑務所の管理者たちの心を動かすことになり、刑務所の外での公演を実現するまでになる。彼らの危なげな芝居はむしろ批評家や観客から予想外の評価を受け、再演に次ぐ再演で、ついに大劇場オデオン座からオファーが届く。彼らは果たして最終公演を感動のフィナーレで迎えることができるのだろうか。ラスト20分、感動で席を立てない。
  • 渡辺俊雄(元NHK衛星映画劇場 支配人)
     スウェーデンの刑務所で実際にあった話をもとにしたフランス映画。囚人たちの為に演技のグループ学習の講師として招かれた売れない役者。不条理劇として有名なサミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」を題材に指導を開始するが、それは一癖も二癖もある5人の囚人たちとの果てしない戦いの始まりだった。彼らがどんな犯罪を犯したのかは明らかにされないが、粗暴な者、策謀に長けた者、だらしない者、中には文字が読めない者もいる。ただでさえ一筋縄ではいかない囚人たちに難解な不条理劇を教えるという事自体、かなり無理があると思うが、意外にも彼らは「俺たちは待つことだけは得意だ」と受け入れる。やがて根っからの演劇人である主人公の情熱は囚人たちをはじめ、刑務所の管理者たちの心も動かすことになり、刑務所の外での公演が実現する。本物の役者とずぶの素人の囚人たちとの訓練ぶりは、毎回一触即発ハラハラドキドキの連続だ。これで本当に舞台が実現するのかと危惧したが、意外にもその危うさが好評を呼び、フランス随一の大劇場からも声がかかる。いよいよ、その大舞台の幕が上がるとき…ああ、これ以上は劇場でご覧ください。
     舞台俳優としてのキャリアを積んだ監督エマニュエル・クールコルが書き上げた脚本が素晴らしい。彼のもとに参集した個性的な役者たちのアンサンブルに酔いしれる。演劇というものに命をかける人々の情熱がほとばしる、非常にウェルメイドな作品だ。

モガディシュ 脱出までの14日間

7月1日(金)より、 新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国にて公開
©2021 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS & FILMMAKERS R&K All Rights Reserved.
7月1日(金)より、新宿ピカデリー、
グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国にてロードショー

2021年/韓国/121分  配給:ツイン、 カルチュア・パブリッシャーズ
<公式サイト>

1991年、ソマリアの内戦が激化し、反乱軍が首都のモガディシュを制圧、空港は封鎖され通信網が断たれる中、命の危険にさらされた外国人たちは、生死をかけて脱出しようとしていた−。ソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの脱出劇を描いた、実話に基づく衝撃の人間ドラマ。2021年度の韓国映画No.1大ヒット、メディアや評論家からも高く評価され、韓国の栄えある映画賞を次々と受賞、第94回アカデミー賞国際長編映画賞部門の韓国代表作品にも選ばれた話題作。

  • 掛尾良夫(田辺・弁慶映画祭ディレクター)
     1990年、韓国と北朝鮮は、国連加盟のために多数の投票権を持つアフリカ諸国に接触、ソマリアの首都、モガディシュでも韓国と北朝鮮の大使が、互いに妨害工作をしながら政府に接近を試みていた。その時、政府と反政府軍との内戦が勃発し、先進国の大使館員たちが次々と国外に脱出する中、韓国と北朝鮮の大使館員たちは反政府軍に追い詰められる。北朝鮮大使館員とその家族は韓国大使館に逃げ込み、韓国大使は国交のあるイタリア大使館に救済を求めた。イタリア大使から国交のない北朝鮮の人々を救援機に乗せることはできないと伝えられ、韓国の大使は何とか彼らを救おうとする……。
     撮影はモロッコで行われ、現地の俳優や大群衆のエキストラを起用。アフリカの強い直射日光と埃が舞う乾いた色調の映像がリアリティーを生み、迫力ある反政府軍とのカーチェイスのシーンは製作費約24億円を投じた韓国映画産業の勢いがそのまま画面に描出されている。実話を基にした、同胞への敵意とそれを超える愛、アクションが融合した、2021年韓国映画興行収入1位となったエンターテインメント大作である。
  • 西山昭彦(立命館大学 教授、博士(経営学))
     実話ベースの映画は、見るほうにある種の緊張感を強いる。厳しい現実に向き合い、重みを受け止めなければと自然に思う。本作品は、その極限状態かもしれない。この映画は、1991年のソマリアの首都・モガディシュで内戦により孤立した韓国、北朝鮮の大使館職員とその家族が生死をかけて脱出する実話だ。現在、ウクライナ市民の戦地からの脱出が文字通り命懸けで行われており、本作の脱出が現実味を増し、迫ってくる。内戦で、反政府派の子供まで銃を持って殺人に走る中、家族を守り生きて国外を目指す二つの大使館員。一瞬も気を許すことができない121分。2021年韓国映画1位は日本でもヒット間違いないだろう。

ベイビー・ブローカー

6月24日(金)より、 TOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開
©2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED
6月24日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国にてロードショー
2022年/韓国/130分  配給:ギャガ
<公式サイト>

古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョンと、〈赤ちゃんポスト〉がある施設で働く児童養護施設出身のドンスは、ある土砂降りの雨の晩、若い女ソヨンが〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状し、成り行きから共に養父母探しの旅に出ることになるのだが−。一方、彼らを検挙するため最初から尾行をしていた刑事が、是が非でも現行犯で逮捕しようと静かに後を追っていた…。第75回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞(主演ソン・ガンホ)、エキュメニカル審査員賞受賞作。

  • 安藤紘平(映画監督、早稲田大学名誉教授)
     赤ちゃんポストに自分が産んだ子を捨てに来た女と、その赤ちゃんを盗んで他人に売ろうとする二人の男、そして、彼らの子供になりたいとついてきた少年。どこか心に傷を負った5人が、少しの間同じ車に乗り合わせて赤ん坊を売りにゆく不思議な旅。是枝裕和監督独特の“疑似家族”の素敵な物語がそこには生まれる。そのことで、私たちは、“家族”というものを改めて捉えなおさずにはいられない。『そして父になる』『万引き家族』に繋がる見事な作品だ。彼らを追う女刑事もまた影を背負っていて、物語に深みを添える。役者たちのなんと素晴らしいことか。大事なポイントを語らないで想像させる是枝監督の演出技術は流石だ。
     思いがけないラストシーンの感動は、ここでは語るまい。見てのお楽しみとしておこう。
  • 藤原作弥(元日本銀行 副総裁)
     『そして父になる』以来、家族という人間関係を描いてきた是枝裕和監督のテーマ意識は一貫していてお見事。映画祭受賞作家には得てして、抽象的な芸術意識を振りかざし、自家撞着(じかどうちゃく)に陥っている例が散見されるが、『ベイビー・ブローカー』は、現代人間社会のあらゆる問題を内包しており、共感と感動が共振する。フランス、韓国…へと舞台を広げるのもさらなる進歩の現われ。

義足のボクサー GENSAN PUNCH

6月10日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開
©2022「義足のボクサー GENSAN PUNCH」製作委員会
6月10日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国にてロードショー
2021年/日本、フィリピン/110分  配給:彩プロ
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沖縄で母親と2人で暮らす津山尚生は、プロボクサーを目指し日々邁進している。ひとつだけ人と違うのは、幼少期に右膝下を失った義足のボクサーであること。ボクサーとしての実力の確かな尚生は、日本ボクシング委員会にプロライセンスを申請するが身体条件の規定に沿わないとして却下される。だが、夢をあきらめきれない尚生はプロになるべくフィリピンへ渡る決意をする。異なる価値観と習慣の中で、日本では道を閉ざされた義足のボクサーが、フィリピンで夢への第一歩を踏み出す−。『キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド-』(09)で第62回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞、不条理な社会でもがきながら懸命に生きる人々を撮り続けてきたフィリピンの名匠ブリランテ・メンドーサ監督が、実話を基に初めてスポーツをテーマにした、夢をあきらめない若者を描いた感動の物語。

  • 宮川直美(医師)
     幼少時の事故で片足義足のボクサーが、プロを目指して歩み続けるボクシングもの。実在の日本人ボクサーがモデルとなっている。日本では安全上の理由からプロライセンスは得られないことから、フィリピンのジムに所属し、フィリピンでプロの実績を積む道を選ぶことに。
     風が吹き抜けるような戸外で行われるフィリピンのボクシングシーンは新鮮かつ、主人公が義足であることが練習・試合中にほぼ問題にされない描写にハッとさせられる。ジムの仲間、ベテランコーチ、みんな不完全だけれど、主人公の肉体的ハンディを見ず、ただプロとして戦いたい意欲だけを見ている様が感動的だ。フィリピンのブリランテ・メンドーサ監督が、日本とフィリピンをつなぐ熱いドラマを紡ぐ。

20歳のソウル

5月27日(金)より、 全国にて公開
©2022「20歳のソウル」製作委員会
5月27日(金)より、全国にてロードショー
2022年/日本/136分  配給:日活
<公式サイト>

 市立船橋高校吹奏楽部に所属する男の子・浅野大義の担当はトロンボーン。活発で優しく、そして真っすぐな大義は、いつも周囲を明るく照らし、そして大義自身も部員たちに支えられ、青春を謳歌していた。なにより特別な存在である顧問の先生に大きな影響を受け、心身共に成長していった。大義は、市船・野球部のために、オリジナル応援曲の作曲に挑戦。作曲の難しさに葛藤しながらも高橋先生からの叱咤激励や親友の助けや母・桂子の応援もあり「市船soul」が誕生する。そして、いざ試合で演奏されるとたちまち得点を呼ぶ〝神応援曲″と呼ばれる様になる。高校を卒業した大義は、高橋先生の様な教師を志し音楽大学へ進学、夢に向かってキャンパスライフを過ごしていた。そんなある日、大義の身体を異変が襲う—。

  • 坪田秀治(日本商工会議所 参与)
     千葉県船橋市立船橋高校に代々受け継がれている応援曲「市船soul」がある。その曲は同校の卒業生である浅野大義君の作曲によるものだが、その彼が20歳という若さで病魔と闘いながら人生の幕を閉じてしまう。その実話を映画化したもの。
     誰からも親しまれた彼の告別式にはOB・現役164人の吹奏楽部員が集い「市船soul」で彼を天国に送り出したという。神尾楓珠が大義役を演じ、佐藤浩市、尾野真千子、平泉成、石黒賢、高橋克典らが脇を固める。とにかく純粋に涙、涙の感動の実話。今年の夏の甲子園予選はまもなく始まるが、思わず「市船soul」を聞きに行きたくなる作品。

ハケンアニメ!

5月20日(金)より、全国にて公開
©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会
5月20日(金)より、全国にてロードショー
2022年/日本/128分  配給:東映
<公式サイト>

直木賞&本屋大賞受賞作家・辻村深月の大人気小説を映画化!世界中が注目する日本のアニメ業界を舞台に、最も成功したアニメの称号=「ハケン(覇権)」を手にすべく闘う者たちの姿を描いた、究極の“胸熱”お仕事ムービーが誕生。愛と情熱と誇りを胸に闘う仕事人たちの姿は、日々を懸命に生きる誰しもが、共感すること間違いなし!

  • 安藤紘平(映画監督、早稲田大学名誉教授)
     アニメの頂点を目指して、これがデビュー作の新人監督と、カムバックした伝説の天才監督が、テレビ番組の同じ時間帯の表・裏でアニメ対決する物語。
     アニメの制作現場を舞台に、それぞれのプロデューサー、スタッフたちが、それぞれの立場でベストな作品を作り上げようともがき、悩む姿がいじらしい。新人監督役の吉岡里帆、そのプロデューサー役の柄本佑をはじめ、役者たちがそれぞれ素晴らしく、よくありがちな筋立てを見ごたえのある作品に仕立てあげている。
     一生懸命に何かに打ち込むことがこんな素敵なことだと改めて教えてくれる作品だ。
  • 高見恭子(タレント/文筆家)
     今では日本が誇れる文化の一つとなったアニメーション。大人気アニメが、どのようにストーリーが決まり、どんな人達が関わり作られていくのか、知っている人は少ないかも知れない。その内部、大人が本気で子どものように大好きを形にしていく情熱に心打たれる。本気って美しいを教えてくれる。

大河への道

5月20日(金)より、全国にて公開
©2022 「大河への道」フィルムパートナーズ
5月20日(金)より、全国にてロードショー
2022年/日本/112分  配給:松竹
<公式サイト>

千葉県香取市役所の総務課に勤める池本保治は、市の観光振興策を検討する会議で意見を求められ、苦し紛れに⼤河ドラマ制作を提案。思いがけずそれが通り、郷土の偉人、伊能忠敬を主人公とする大河ドラマの企画が立ち上がってしまう。ところが企画を進めるうちに、⽇本地図を完成させたのは伊能忠敬ではなかった!?彼は地図完成の3年前に亡くなっていた!という驚きの事実が明らかに……。江戸と令和、2つの時代を舞台に明かされていく⽇本初の全国地図誕生秘話。そこには地図を完成させるため、伊能忠敬の弟子たちが命を懸けて取り組んだとんでもない隠密作戦があったー。

  • 浅香光健(演劇舞踊浅香流 名取)
     江戸と現在、2つの時代を舞台に、明かされていく日本初の全国地図誕生の秘話。中井貴一をはじめ芸達者が勢揃い、見応えあり。
  • 三遊亭小円楽(落語家)
     皆様ご存じ初めて日本全図を作ったと言われる伊能忠敬が、実はそれを完成させてはいなかった!と言う「事実」に着目した切り口は、いかにも原作の立川志の輔氏ならではの落語的発想の神髄だと思った。ただ、この事実に単なるいちゃもんを付けるのでは無く、忠敬の死後の周りの人々の艱難辛苦(普通は暗くなりがちな)物語を面白可笑しく描き上げたシナリオ、演出陣の努力に拍手を送りたい。また個性豊か出演者たちのメリハリの効いた演技も光りなかなかな一作となった。

流浪の月

5月13日(金)より、全国にて公開
©2022「流浪の月」製作委員会
5月13日(金)より、全国にてロードショー
2022年/日本/150分  配給:ギャガ
<公式サイト>

帰れない事情を抱えた少女・更紗(さらさ)と、彼女を家に招き入れた孤独な大学生・文(ふみ)。居場所を見つけた幸せを噛みしめたその夏の終わり、文は「誘拐犯」、更紗は「被害女児」となった。15年後―偶然の再会を遂げたふたり。それぞれの隣には現在の恋人がいた…。いつまでも癒えない傷を抱えて生きてきたふたりが手を伸ばした、ひとすじの光。一歩先の未来。世界の片隅で生きる〈許されない〉ふたりの物語。

  • 高見恭子(タレント/文筆家)
     原作小説のイメージそのまま、美しい光、風、音と共に、スクリーンに圧倒的に広がる。李相日監督とホン・ギョンピョ撮影監督の見事な審美眼。俳優たちの憑依感。誰にも言えない秘密を抱えた孤独な青年と、居場所のない幼女。欠けたものを埋めあう様に、ふたりが強く惹かれ依存していく様は、切なく恐く愛おしい。この愛こそ永遠の甘美。素晴らしい映画。
  • 宮川直美(医師)
     児童誘拐事件の被害者・更紗(広瀬すず)と加害者・文(松坂桃李)―15年の時を経て再会した2人の間には、世間で持たれている印象とは違う心の繋がりがあり…。
     なかなか難しい題材に挑んでいる。保護者に無断で10歳の少女と一定期間一緒に暮らすというのは、まぎれもない誘拐なのだが、少女としては自宅の方に脅威と危険を感じており、ある意味シェルターのようだったと感じている。少女には長じてから恋人(横浜流星)もできるが、気の毒な生い立ちでどこにも逃げ場がない人間だからこそそばにおきたいという姿勢を示してくる。当時も今も、ほぼ世間と交流を絶ったような暮らしで感情を露わにしない文と過ごす時間に安心を感じる更紗の選択は、周囲の理解を得られるのか。
     注目を浴びた事件の被害者が、その後も周囲から腫れものに触るような扱いを受け、真意を伝える相手がいないという苦しさに対して何ができるだろうかと、重い問いを突きつけられる。
 
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