- TOP
- アジアファッション連合会
- 活動履歴
- 2015 ベトナム・ハノイ大会
活動履歴
2015 ベトナム・ハノイ大会
概要
1. アジアファッション連合会(AFF)参加国
AFF Japan 一般 財団法人日本ファッション協会(JFA)
AFF China China Fashion Association (CFA)
AFF Korea Korea Fashion Association (KFA)
AFF Singapore Textile Fashion Federation Singapore(TAFF)
AFF Thailand Thai Garment Manufacturers Association(TGMA)
AFF Vietnam Vietnam Textile & Apparel Association (VITAS)
2. AFFについて
ファッションを生活文化全般と広く捉え、加盟国の相互理解のもと、各国の生活文化の向上を図るとともに、ファッションビジネスを活性化させ、アジアのファッションを世界に発信することを目的に2003年12月に日中韓の連合会として発足。その後、2007年にシンガポール、2008年にタイ、2009年にベトナムが加盟し、今年で13年目を迎える。
3. 大会概要
AFF大会は、生活文化向上の啓発、および参加国の相互理解・交流をベースとしたファッションビジネスの活性化を目的に、年に一度、加盟国の持ち回りで開催している。
第12回ベトナム・ハノイ大会は、ハノイで開催される展示会の「Vietnam Fashion, Fabric & Garment Machinery Expo」と会期を合わせ実施。Expo内でもAFFデザイナーの作品展示やファッションショーを行いAFF活動の周知や、グローバルビジネス展開の機会を創出した。
今大会では「ASIAN FASHION-Value and Differentiation」をテーマに、各国デザイナーが自身のオリジンを意識し、そのエッセンスを現代的に表現したクリエイションを発表するファッションショー、国内外からファッション業界のオピニオンリーダーが講演するシンポジウム、情報交換や人的交流促進を図るレセプション・パーティーを実施した。
また、産業視察として、今年の10月28日にオープンした「イオンモールLong Bien」や2012年に誕生した高さ350メートル・72階建てのオフィスタワー「ランドマーク72」を訪問し、最新のベトナム状況を見学。併せて昔ながらの生活様式を残す「ドンスアン市場」を訪れることでライフスタイルの新旧を体感した。ファッション市場視察は、エレガントなショップが立ち並ぶファッションストリート「ハンガイ通り」を訪れファッションの現状を把握した。加えて、「ハノイ民族学博物館」にて多民族国家であるベトナムの多様な生活文化を見学した。
4. トップ会談
11月24日(火) 15:00~18:00 Thang Loi Hotel, Convention room 3
現在の六カ国体制になってから12年が経過し、これまでの加盟各国の努力によって相互交流・相互理解は大きく進展、その結果として生活文化の向上やファッションビジネスの振興に一定の貢献ができたことから、今後のAFF体制や方向性について次のとおり見直しを行った。
● AFFは存続させるが、今後は各国の目的に応じて二国間、あるいは多国間の交流や協働事業の実施を促進し、より自由度の高い体制へと移行する。
● 委員長会議、実務者会議は、定期的にオンラインシステムを活用し実施する。ただし、二年に一度、委員長が一堂に会する対面式の委員長会議を開催する。
● 従来まで年次大会として実施していたファッションショー、セミナー等については、対面式の委員長会議を主催する国が、併せて実施するか否かを決定する。他の加盟5カ国がそれに参加するか否かは自由とする。ファッションショーについては、デジタル活用も検討する。
● 次回の対面式委員長会議は、中国が主催国となり2017年に開催する予定。
5. プログラム
(1) オープニングセレモニー 11月25日(水)17:30~18:00 Thang Loi Hotel, Convention room 1-2
各国AFF代表挨拶
|
AFF Vietnam委員長 AFF Japan委員長 AFF China委員長 AFF Korea委員長 AFF Singapore委員長 AFF Thailand委員長 |
Mr. Vu Duc Giang 平井 克彦 氏 Mr. Dangqi LI Mr. Dae Yun WON Mr. David WANG Mr. Thavorn KANOKVALEEWONG |
AFFベトナム Thavorn KANOKVALEEWONG委員長より |
---|
|
AFF日本 平井委員長より |
---|
|
AFF中国 Dangqi LI委員長より |
---|
|
AFF韓国 Dae Yun WON委員長より |
---|
|
AFFシンガポール David Wang委員長より |
---|
|
AFFタイ Thavorn KANOKVALEEWONG委員長より |
---|
|
左から ○ベトナム委員長 ○タイ委員長 ○シンガポール委員長
○ベトナム産業貿易相Ho Thi Kim Thoa副大臣 ○韓国委員長 ○日本・平井委員長 ○中国委員長
(2) ファッションショー 11月25日(水)18:00~19:00 Thang Loi Hotel, Convention room 1-2
加盟各国において将来を嘱望されるデザイナーによる合同ファッションショー。今大会は、「Asian Fashion-Value and Differentiation」をテーマに各国で注目を集める新進デザイナーが参加し、自身のコレクション11点を発表した。
ファッションショーは、翌日に「Vietnam Fashion, Fabric & Garment Machinery Expo」の会場でも実施し、世界各国から集まったファッション業界関係者にもアジアンクリエイションをアピールした。また、同会場内に参加デザイナーのコレクションを展示し、参加デザイナーにグローバルなビジネス展開の機会を提供した。
- ≪参加デザイナー≫
AFF Japan
designer 井野 将之
Label doblet official site
【プロフィール】 東京モード学園卒業。企業デザイナーとして経験を積んだ後、ミハラヤスヒロにて靴・アクセサリーの企画生産を務める。その後、パタンナー村上高士とともに、「doublet」を立ち上げ、2013年春夏の展示会よりデビュー。2013年「Tokyo新人デザイナーファッション大賞」プロ部門のビジネス支援デザイナーに選出され、最高位の東京都知事賞を受賞
【ブランドプロフィール】 スタンダードさに独創的なアイデアを加えた「違和感のあるリアルクローズ」をコンセプトに、 ウェアからアクセサリーまでのトータルアイテムを展開する。
AFF China
Designer Tom Dong
Label TD official site
【プロフィール】 2014年中国ファッション・ウィークにて中国ブランド賞受賞
AFF Korea
Designer Younhee Park
Label GREEDILOUS official site
【プロフィール】 2009年ブランド創設 2011年第2ブランドYUNNI.Gも始動
AFF Singapore
Designer Islean Valath
Label ARC official site
【プロフィール】 2012年ブランド創設 シンガポール、香港、シドニーで展開
AFF Thailand
Designer Chanchai Suwannachaya
Label SIX POST MERIDIEN official site
【プロフィール】 フリーランスデザイナーを経て、2010年ブランド創設
AFF Vietnam
Designer Bui Minh Trang
Label KELLYBUI official site
【プロフィール】 ロンドンでファッションを学び、2006年ブランド創設
(3) セミナー 11月25日(水) 13:00~16:00 Viet Xo Cultural Palace, 2F conference room
AFF各国のオピニオンリーダーによるセミナーを実施。今回は、「ベトナムのファッション産業とライフスタイル」、「中国ファッション産業とeコマース」、「タイの製品開発ワークショッププロジェクト」、「シンガポールのデザイナー支援プロジェクト」という多岐にわたるトピックについて、それぞれの概要や講師の見識を聴講した。
第1部 『ベトナムのファッション産業とライフスタイル』
- 《講師》
-
Mr. Le Tien Truong
Vice Chairman, VITAS
《要約》
「ベトナムのファッション産業」
テキスタイルとアパレル業界: 労働者約250万人、輸出額約約247億USD、ガーメント企業数約4500
繊維: 綿の年間需要400,000トンに対し生産は5,000トン、ポリエステル短繊維などは需要量400,000トンの半分を輸入に頼る。
紡績: 生産能力6百万錘、年間のTC(ポリ/綿)、CVC(綿混紡糸)、TR(ポリ/ビスコース)などの生産量は720,000トン(輸出70%:国内消費30%)
織布: 年間生産量14億㎡、生機輸出4億㎡
染色加工: 年間加工能力8億m
縫製品: 2014年の輸出額は約247億USD、2015年は275億UDSを予測。使用生地は68億㎡(内60億㎡を輸入)
素材供給は、海外のサプライヤーに依存しており、デザイナーとテキスタイル企業のコネクションが不足している。現在、ファッション産業の発展のために、将来性やクリエイション力、経済面など幅広い観点を備えた戦略を打ち出し、デザインの能力開発やマネージメント強化、国内市場開発など具体的な活動を行っている。
「ベトナムのライフスタイル」
月額消費内訳: 食費33%、貯金15%、ファッション14%、車やバイク12%、娯楽10%、美容7%、その他11%
ファッション: 20~30代の購買要因は、必要に応じて買い揃える32%、トレンドを追いかける34%、ファッションや美容に興味がある34%
男性はブランドネームや価格を、女性は、スタイル、デザイン、カラーを重視する。
嗜好色: (トップス)白、ピンク、赤 (コート・ブレザー)黒、白、スカイブルー (ボトムス)黒、紺、白 (スカート)黒、ピンク (ドレス)黒、白
ベトナムのファッション産業はまだ始まったばかりで、デザイナーやモデル、スタイリストの定義が不十分であるものの、この十年はファッションやテキスタイル分野で大きな変化が続いている。ベトナムのファッションは、伝統的な審美眼を持ちながら世界トレンドに追いつこうと日々進化している。
第2部 『中国ファッション産業とeコマース』
- 《講師》
-
Dr. Zhang Qinghui
Vice President & General Secretary, China Fashion Association
Vice Chairman, AFF China
《要約》
中国は、生活水準の向上により、ライフスタイルが変化。ファッションへの関心や美意識の高まりとともにファッション消費額が増大している。中国のファッション小売りは、マルチレベルで展開されており、直売、卸売、代理店、さらに大規模なショッピングモール、デパート、フランチャイズ店、卸売市場、そしてeコマースが共存する。
「80後」と呼ばれる、一人っ子政策後に誕生した1980年代生まれの若者が、消費の主力となると、ECサイトが広く活用され中国の巨大マーケットを刺激、アパレル消費の成長率がさらにアップした。現在は、ECサイトが充実しさらに身近な消費ツールとなっている。ECサイトは、TMALL.COMが最大手で、JD.COM、1号店、Moonbasa、Vip.com、VANCL、Suning.com、dangdang.com、JUMEI.COM、GOMEなどが後に続く。スマートフォンの登場が、中国のファッション産業成長を促進し、オンラインによるアパレルファッションの売り上げは、2009年の6260億元から2014年には、61530億元へと推移し、毎年20%以上の伸び率を維持している。
現在は、デザイナーブランドも成長し、中国のファッション消費を刺激する重要な役割を果たすようになった。特にグローバル展開やオリエンタルな文化的背景を打ち出すデザイナーブランドのEACHWAY、ZUCZUG、TANGY、Cabben、Jnby、Zeng Fengfei、Jieshi、Youz、Youz Uma、OMNIALUO、Denghao、Jefenなどが注目されている。
中国ファッション協会は、オリジナルのECサイトを開設し、主催する展示会「DHUB」に参加するデザイナーブランドを取り扱う。サイトをチャイナ・ファッション・ウィーク等で積極的にプロモーションするなどし、デザイナー支援に取り組んでいる。
第3部 『タイの製品開発ワークショッププロジェクト』
- 《講師》
-
Dr. Anothai Cholachatpinyo
Assistant Professor, Kasetsart University
《要約》
タイ政府(Dept of International Trade Promotionおよび産業省)の支援を受け2015年に実施した「製品開発ワークショッププロジェクト」は、ファッション製品についてOEMからODMやOBMへのシフトを図り、市場ニーズに沿った新しいコレクション展開を促進させることを目的としている。具体的には、バンコク・インターナショナル・ファッションフェア&レザーフェアに参加した70のデザイナーや企業を対象に、各プログラムを通して、市場分析や各市場のマーチャンダイジングについての理解度アップ、クリエイションへのアドバイス、市場にリリースする際の価格設定やプレゼン方法などについて国内外の専門家からの指南、また、知名度を上げる手助けなど多様なサポートを提供した。
第4部 『シンガポールのデザイナー支援プロジェクト』
- 《講師》
-
Ms. Lynette Lee Bee Leng
Chief Executive Officer, Textile & Fashion Federation
《要約》
シンガポールのローカルデザイナー支援プロジェクト「Keepers」は、様々な分野のデザイナー(ファッション、アクセサリー、建築家、家具、ライフスタイルグッツ、音楽家など)を対象に2014年9月から2016年1月に渡り実施されている。主なプログラムは、作品展示、ポップアップストアの開設、ワークショップや誘導イベントの開催。併せて、異業種のデザイナーが集いそれぞれのブランディングについて語り合うトークイベントの開催や、ワークショップに異業種のデザイナーを参画させるなど、デザイナー交流を活発化させることで相互向上を図っている。これまでに109名のデザイナーが参加し、60を超えるイベントやワークショップを開催。延べ集客数は、171,000名を超える。ポップアップストアは、クオリティやオリジナリティを重視しトレンドをけん引する20代後半から40代をターゲットとしオーチャードストリートに開設、国内外から注目を集めている。
(4)セレプションディナー 11月25日(水) 19:30~21:00 Thang Loi Hotel, Suoi Truc Restaurant
加盟国メンバーが参加し、意見・情報交換等を通して参加者間の交流が行われた。
(5) AFF大会 関連イベント 「Vietnam Fashion, Fabric & Garment Machinery Expo」見学 11月25日(水) 9:30~11:30 Hanoi International Center for Exhibition (ICE)
オープニングセレモニーに参列し、開会時に実施されたファッションショーを見学するとともに、各国から出展した企業のブースやメインステージ脇に展示されたAFFデザイナーのコレクションを見学した。
≪Vietnam Fashion, Fabric & Garment Machinery Expo概要≫
繊維機械(紡績、不織布、織り、編み、染色、仕上げ、衣服制作、テスト、ソフトウェア)をはじめ、染料や化学薬品、また、衣料品やファッションアクセサリー、繊維など多岐に渡る展示商談会
AFFは、ファッションショーに参加した6カ国デザイナーのコレクションを展示すると共に、11月26日(木)午後にAFFファッションショーを実施、ブランドPRの機会を提供した。
EXPO 会場内 | |
展示されたAFF Japanデザイナーコレクション | EXPO出展企業 |
EXPO出展企業 | |
EXPOでのAFFファッションショー |
(6) ベトナム進出企業関係者との懇談会 11月24日(火) 9:00~12:00 Thang Loi Hotel, Convention room 3
東レ・インターナショナル・ベトナムホーチミン事務所長 山口孝明氏をお招きし、安定した政治・社会状況、充実したインフラ、地理的優位性、そして成長を続ける国内消費市場など総合力をもって実証されるベトナムへのビジネス進出におけるポテンシャルの高さを解説いただいた。また、産業や貿易動向、日本の投資動向の紹介とともに、TPP などの経済連携協定が新たにもたらすベトナムの可能性についても講説いただき、懇談会を実施した。
(7) 産業視察
ランドマーク72 11月23日(月) 14:50~15:35
振興ビジネスエリアとして注目されるファムフン地区に2012年オープンしたハノイのランドマークタワーを訪れ、発展目覚ましい周辺状況を高層階から見学した。
ファッションストリート 11月23日(月) 16:15~16:45
旧市街地に位置するファッションストリート「ハンガイ通り」を訪れ、ハノイの小売店の様子や最新トレンドを視察した。
ハンガイ通り | ハンガイ通り沿いのショップ |
イオンモール 11月24日(火) 14:00~15:00
ハノイ中心部から東へ約5キロのロンビエン区に2015年10月28日オープンしたイオンモールを訪問。衣食住の商品に加え、エンターテイメント施設も充実するワンストップ・サービスがベトナムの新しいライフスタイルとして定着していくだろう状況を見学した。
食料品は、日本の商品が多数並び安心安全を意識する傾向が感じ取られ、ライフスタイル製品については、アパレル商品だけでなく、大型家電や世界各国の雑貨、玩具を扱う店舗が賑わい、経済発展に支えられ購買力が上昇している様子が伺えた。
【イオンモールLong Bien概要】
出展数 : 約180専門店
面積 : (敷地)約96,000㎡ (延べ床)約120,000㎡
建物構造 : 地上4階
駐車台数 : (車)約1,000台 (オートバイ)約10,000台
営業時間 : (専門店・食品店)8:00~22:00 (シネマコンプレックス)8:00~24:00
休業日 : 無休
従業員数 : 約2,000名
基本商圏 : バイク20分圏 約28万世帯 約102万人
公式HP : http://aeonmall-long-bien.com
イオンモール内 |
生活文化視察
ドンスアン市場 11月24日(火) 15:30~16:00
ハノイの旧市街は、北へ向かうほどにローカル色が強くなる。その最北に位置するハノイ最大規模のマーケット「ドンスアン市場」にて昔ながらの生活感に溢れた風景を見学した。市場は、3階層の建物に食品、日用雑貨、衣料品店が所狭しと並び、周辺にも出店が軒を連ね、多くの人々で賑わう。
ドンスアン市場内 | 場外 |
ハノイ民俗学博物館 11月26日(木) 9:00~10:30
54の民族が住んでいるといわれるベトナムの多種多様な生活様式を見学した。
6. 同行記
ファッション・ビジネス・フォーラム 代表 聖生 清重
AFF、自由度を増し新たなステージへ
AFFは存続、イベントは各国の裁量で
アジアファッション連合会(AFF)の第12回ベトナム・ハノイ大会が、去る11月24日から26日までベトナム・ハノイで開催されました。加盟6カ国(日本、中国、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム)による各国持ち回りで開催してきた年次大会が、今回のベトナムで二巡したことから、AFFとしての第一段階の役割は果たした、として従来の年次大会方式を発展的に解消し、今後は、参加各国の自由度を増した新たな運営に移行することが決まりました。
AFFは「21世紀はアジアの世紀」と言われる中、2003年12月に東京で日本、中国、韓国3カ国のファッション協会が、生活文化の向上・振興、相互理解・相互交流、アジアファッションの世界への発信、若手デザイナーの育成、ビジネス促進の環境整備などを目的に発足しました。その後、シンガポール、タイ、ベトナムが相次いで加盟し、活動領域は当初の北東アジアからアジア全域に広がりました。
活動は、年次大会が軸でした。年1回、各国持ち回りで開く年次大会は各国代表による「委員長会議」、各国1人の計6人の若手デザイナーのファッションショー、市場動向やeコマース、ファッショントレンドなどをテーマにしたセミナー、大会会期と同時期に開催されている各国の繊維ファッション産業の展示商談会の視察、商業施設や服飾博物館の見学、レセプションや大会会場ロビーでの交流などでした。
今回のベトナム大会では、発足メンバーでありAFF窓口である日本委員会の平井克彦委員長(東レ相談役)が「AFFの発展的解消」の意向を表明しました。これに対して、各国から「改革には賛成だが、AFFの枠組みは存続させたい」との意見が強く出され、協議の結果「AFFを存続」した上で①AFFウェブサイトは継続し、各国は月に1回以上更新する②年次大会は見直し、今後は各国の目的に応じて二国間、多国間の交流や協働事業を実施し、より自由度の高い体制に移行する③従来、大会で実施してきたファッションショー、セミナーなどは委員長会議主催国が実施するか否かを決定し、他の加盟5カ国が参加するか否かは自由とする④若手デザイナーによるファッションショーはデジタル化することを検討する⑤これまでの委員長会議、実務者会議はオンラインコミュニケーションを基本に年一回、実務者会議は年二回行う。二年に一回は委員長が一堂に会する委員長会議を開催する―などで合意しました。
運営方法を見直すことになった日本の主張の背景にはAFFの窓口団体である日本ファッション協会の趣旨が「生活文化の振興」にあり、6カ国体制になった以降の狭義のファッション産業に傾斜した活動とそぐわなくなってきたという面もありますが、これまでの活動で当初の目的は達成し、ビジネスの促進には新たな枠組みや各国ごとの対応が必要だとの判断が働いたものと見られます。
オリジン(起源)に敬意を払ったデザイン
過去12年間のAFF活動を振り返りますと、当初、3カ国で構成していた頃は、「アジアカラー」の共同研究が印象に残ります。各国でカラー(色彩)に対する好感度が異なることなどが実証的に明らかになりました。いずれは世界にアジアカラーを発信できるのではないか、との予感も感じさせました。
セミナーでは、加盟国が6カ国に拡大した後の2009年のベトナム・ハノイ大会で講師を務めた「まとふ」の堀畑裕之・関口真希子氏の講演が画期的でした。両氏は、欧米発のファッションが世界のファッション産業を主導している現状に対して「各国・地域のオリジン(起源)に敬意を払ったデザイン」の重要性を強調しました。欧米の追随では、いつまで経っても欧米を追い抜くことはできません。だからこそ、各国・地域の歴史や文化に敬意を払ったデザインを創造することが大事だ、との提唱は加盟各国のファッション産業関係者の感銘を呼びました。アジアにおけるファッションデザインの基調になる、AFFの確かな成果のひとつだと思います。
また、AFFの目的のひとつである若手デザイナーの育成でも、日本代表として過去のAFF年次大会でファッションショーを行った天津憂、江角泰俊、森川マサノリらは、その後、着実に評価を高めています。他の5カ国代表もおそらく、AFFでのショーを踏み台にそれぞれ、活躍しているのではないでしょうか。
日中韓もそうですが、シンガポール、タイ、ベトナムは、発展度合いに差はありますが、ファッション産業の振興・高度化、世界レベルのファッションデザイナーの輩出を目指しています。その一環としてAFF年次大会を位置付けているように思えます。今回のベトナム大会では主催国を代表してベトナムAFF委員会のヴ・ドゥク・ザン委員長があいさつで「大会を主催することは大変、名誉なことです」と述べました。若手デザイナーのショーにはベトナム産業貿易省の女性副大臣も出席し、AFF年次大会への敬意とファッション産業振興への熱意を体現していました。AFFが、タイやベトナムの産業高度化に相応の役割を果たしてことは間違いありません。
次回のAFFは、2017年に中国で開かれます。その次は2019年の韓国、2021年の日本です。主催各国がどのようなイベントを行うかは各国の裁量にまかされます。その一方で、タイは日本との関係強化を望んでいます。タイのファッション産業の高度化に向けて、日本のノウハウを求めているものと思われます。今後、日本が何らかの協力を求められるケースが出てくるかも知れません。あるいは、AFF加盟6カ国それぞれのニーズにそって2カ国、多国間でより実質的な協働ワークを行うことも考えられます。
TPPを起爆剤に発展目指す
AFFベトナム・ハノイ大会に合わせて、ベトナムの最新事情を知り、見る機会がありました。在ベトナム15年のベトナム通の山口孝明・東レインターナショナルベトナム・ホーチミン事務所長の解説を中心にベトナム最新事情を報告します。
ベトナムの魅力は①政治的・社会的に安定し、低廉で質の高い労働力がある②ASEANと中国華南地域をつなぐ交通の要衝にある③9200万人の国内消費市場がある、点にあります。
こうした背景から、現状は第三次ベトナム投資ブームにあり、なかでも日本からの投資が急増しています。日本からの投資件数は、2012年の365件が2013年は426件、2014年は488件と増え続けています。この投資の主役は中小企業で、投資を呼び込んでいるのが「レンタル工場システム」と呼ぶ仕組みです。
「レンタル工場システム」は、ベトナム側が500㎡~3000㎡規模の工場を用意し、投資する企業は進出を決断すれば、3カ月後には操業できるという画期的な仕組みです。工場用地の買収、建屋の建設からまぬがれ、書類も日本語フォーマットのものが用意されているそうですから「日本語の名刺しか持っていない中小企業でも進出している」(山口氏)とのことです。
ポストチャイナ国を、VIP(ベトナム、インドネシア、フィリピン)・CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)+B(バングラデシュ)で多面的に比較した場合、ベトナムは「ある程度の品質の製品を長期的、安定的に生産して輸出する国」として比較優位にあると言います。
ベトナムが生産国として優位にある理由にTPP(環太平洋経済連携協定)があります。ベトナムにとってTPPはハードルが高いのではないか、との見方もありますが、山口氏によりますと、ベトナムはTPPを起爆剤に経済発展を目指しており、TPPは産業の高度化を進展させる可能性が高いと言います。特に、縫製業では現状、全縫製品輸出の50・0%を占める米国向けがTPPによって平均18・0%の関税がゼロになることから、そのメリットは大きく米国向けが急増する見通しにあります。
ベトナムの縫製業にとっては、国内に素材産業が育っていないことが弱点でした。しかし、TPPを見据えて、中国、韓国企業や日本商社が紡績、テキスタイルなどの素材で積極的に投資しています。現に最近では、綿織物を輸出するまでに育っています。一部、合繊の機能素材などは輸入に依存するとしても多くの素材は自給が進展しています。
こうしたことから、山口氏は縫製業に関して、人件費の安さだけで進出したバングラデシュやカンボジアからベトナムに回帰する動きが表面化するのではないか」と予測しています。
AFF大会の会期中は、ハノイで「ベトナム・ファッション・ファブリック&ガーメント・マシナリーEXPO」が開かれていました。7カ国・地域の92社が出展したEXPO会場の中央は縫製機器が占めていました。テキスタイルは中国企業の出展が目立ちましたが、展示品を見る限りでは質量とも物足りなく発展途上の印象がまぬがれませんでした。
一方、消費国としてのベトナムは人口の多さ、今後予想される中間所得層の増加に伴い、小売り産業は確実に成長しそうです。今回、イオン、イオンモールが10月28日にハノイ近郊にオープンした「イオンモールロンビエン」店を見てきました。地上4階建て、延べ床面積約12万㎡のモールは、訪れたのが平日の午後でしたが、多くの来店客がモール内でのんびりと過ごしていました。
日本貿易振興機構によると、ベトナムの中間層(世帯可処分所得5000ドル~35000ドル)は、2015年は全世帯の37・4%ですが、2020年には50・6%、2030年には77・8%に高まると予測されています。TPPを起爆剤にした経済発展が順調に進展すれば、その成果として消費力も確実に高まることが予想されます。
12年間の変化と成果
AFFが東京で発足して12年。この間、アジアには消費を牽引する中間層が生まれ、その数が急速に増えています。世界の繊維・アパレル製品の生産地として「世界の工場」の役割を果たす中で「生産地が消費地になる」との歴史の法則にそって、次第に消費国としての顔も持つようになりました。
一方、TPPに代表されるように、FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)が締結され、新たな貿易地図が描かれようとしています。AFFベトナム・ハノイ大会を主催したベトナムがTPPに参加し、「メード・イン・TPP」の果実に大きな期待を寄せていることは、その象徴ではないでしょうか。
AFFの12年で、日本、中国、韓国、シンガポール、タイ、ベトナムのファッション産業関係者の相互理解・相互交流は確実に進展しました。相互理解をベースにした人的ネットワークは、今後、AFF加盟6カ国にとどまらず、アジア全域の生活文化の向上、アジアファッションの世界への発信、ファッション産業の高度化などに有形無形の恩恵をもたらすことになるでしょう。AFF大会に12年連続で参加した筆者の率直な感想です。