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日本クリエイション大賞

2011年 授賞案件

「日本クリエイション大賞2011 大賞」

未来に向けて自ら立ち上がった被災集落

馬場中山「未来道・なじょにかなるさープロジェクト」 殿 (宮城県本吉郡南三陸町)

 2011年3月11日、東日本大震災により発生した大津波は、宮城県本吉郡南三陸町にある、わかめの養殖が盛んな小さな漁村「馬場中山集落」をも襲った。
 壊滅的ともいえる被害を蒙った馬場中山集落は、道路も寸断され孤立。高台の小さな集会所「馬場中山生活センター」には400人の住民のうち約半数の200人が避難し、残りの住民たちも北と南にあるそれぞれ別の避難所へと避難した。震災直後、生活センターに孤立した200人の住民たちは、がれきの下から砂まみれの米を拾い集め、掘り起こした冷蔵庫から回収した食べ物を分け合って生き延びた。
 行政の支援がなかなか届かない孤立集落は、震災からちょうど1カ月後の4月11日、ホームページを立ち上げ、全国に支援を直接呼び掛ける。さらに、これから100年先の世代まで安心して暮らしていけるよう、行政の支援を待たず二つのプロジェクトを立ち上げた。津波の被害を受けなかった高台を通る道路をつくる「未来道プロジェクト」と、わかめの養殖を復活させ、漁村としての復興を目指す「なじょにかなるさー(なんとかなるさ)プロジェクト」。
 二つのプロジェクトに対する支援を、ホームページで呼び掛けると、全国からさまざまな支援の手が上がった。
 地権者の承諾を得て、有志の力で工事が進められている未来道づくり。道を切り拓き、がれきのコンクリートを砂利にする重機が届けられる。必要な道具を借りるレンタル料などプロジェクトに対する義援金が贈られてきた。未来道のほぼ全域に敷設される砂利も届いた。木を切り倒し、重機を動かし、砂利を敷設するダンプを運転するボランティアが訪れ、全長約1.3kmに及ぶ道路はほぼ開通し、現在では、道幅の調整や勾配のきつい部分をなだらかにする作業や切り取った木を薪にする作業などが行われている。
 津波で船も漁具もすべて失い、震災から約4カ月を経て立ち上げた「なじょにかなるさープロジェクト」も、震災前の10分の1程度の規模でわかめ養殖を再開しようと動き出した。わかめ養殖再開に必要な船を求めて、プロジェクトメンバーが北海道へわたり、NGOなどの支援を得て中古の船を購入。『第十八福福丸』と名づけられた船は、わかめ養殖用のアンカー(おもり)の設置などに使われた。わかめの種挟み作業が行われ、3 月に収穫される復興わかめは『福福わかめ』と名づけて売り出すほか、お世話になった人々にも届ける予定だ。
 ホームページは4月11日以降、毎日更新され、届いた支援物資や訪れたボランティアの写真が掲載されている。馬場中山生活センターでの避難生活も、仮設住宅への移転が進んで、震災から4カ月目の7月11日にはついに終わり、同センターは避難所から集会所に戻った。ホームページには人々の生活が少しずつ再建されていく様子も克明に記録された。
 そこには、自然の猛威に負けず、自分たちの力で未来を切り拓くため、なじょにかなるさーと立ち上がった人々の姿がある。

 

084瓦礫を砕く重機size_down

がれきを砕き、道をつくる

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わかめを養殖用に入手した中古漁船

 

日本クリエイション大賞2011 先端技術賞

先端技術が開く日本のものづくり力

炭素繊維協会 殿 (東京都中央区)

日本は、高度経済成長期以降、自動車、エレクトロニクスなど加工組み立て型の産業で世界をリードしてきた。しかし、近年はこれらの産業で新興国などの追い上げを受け、その優位に陰りが見えてきている。そんな中、日本の産業競争力の源泉となっているのが、高度な素材や部品であり、炭素繊維はこうした高機能素材の一つである。
 現在の炭素繊維の主力であるPAN系炭素繊維は、1961年に大阪工業試験所(現産業技術総合研究所)の進藤昭男博士により発明された。1963年には群馬大学の大谷杉郎教授によりピッチ系炭素繊維が発明され、それぞれ70年代から工業生産が始まった。
 PAN系炭素繊維は特殊なアクリル繊維を蒸し焼きにして作られる。炭素繊維は繊維単独で用いられることはなく、一部の例外を除いて樹脂で固められた状態で用いられる。炭素繊維に樹脂を含浸したものを炭素繊維複合材料(CFRP)と呼ぶ。炭素繊維から直接に最終加工が行われることもあるが、炭素繊維を一方向に引き揃えて樹脂を含浸したシート状の中間基材である「プリプレグ」や炭素繊維「織物」を介して最終的な加工品が成型されるなど加工法はさまざまである。
 炭素繊維は、鉄の4分の1の重さで10倍の強度と優れた特徴を有する一方、コストも高く、発明当初は、ロケットや人工衛星など限られた市場しかなかった。そんな中、炭素繊維メーカーはゼロから市場を創っていく必要があったが、釣竿やゴルフクラブ、テニスラケットなど趣味やスポーツの世界での採用に成功し、さらに航空業界への採用を進め、軽く強いという特性を生かし利用を拡大させていき、80年代後半には市場拡大を期待して多くの海外企業が市場参入を果たした。しかし、それが需給バランスの悪化をもたらし、さらには湾岸戦争後の航空不況が重なり多数の企業が事業撤退を余儀なくされた。現在は日本メーカーが世界の炭素繊維市場の約70%のシェアを占める。現在の用途は、航空宇宙関連、スポーツ・レジャー用品、工業用の圧力容器や土木建築の構造材、風力発電の回転羽根(ブレード)、医療機器など多岐にわたる。
 近年、原油価格の高騰から、省エネルギーを求める航空機への採用が進んでいる。2011年9月に世界に先駆けてANAが導入したボーイングの新しい中型機787は、機体重量の約50%に炭素繊維複合材を使用することによって、大幅に軽量化し、高い飛行性能と快適な居住性を実現した。ボーイング787では、強度が高く湿度に強い複合材を使うことで、より地上に近い気圧や湿度を保てるようになり、従来機にない快適性を有している。
 また、産業用では、圧力容器、風力発電、自動車等で炭素繊維の利用が大きく伸びることが期待されており、ますます需要が拡大することが見込まれている。中でも、最も期待されているのが、自動車への本格的な採用である。これまでコストや加工性の面から自動車での使用は限られていたが、ここ数年で加工技術が急速に進化し、採用が具体化している。炭素繊維の大手メーカー各社は、それぞれ自動車メーカーと提携し、電気自動車など次世代の自動車の車体や部品などに炭素繊維複合材が使われる予定である。
 発明から50年、日本メーカーが圧倒的な競争力を持つ炭素繊維は、世界的な省エネルギーの流れの中で、いよいよ本格的に花開くときがきたようだ。

 

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炭素繊維「クロス」

 

炭素繊維は風力発電のブレードにも採用されている(写真提供:Vestas社)

炭素繊維は風力発電のブレードにも採用されている(写真提供:Vestas社)

 

 

日本クリエイション大賞2011 ドリームテクノロジー賞

若い力とものづくり日本の技術力を結集したソーラーカーで、国際レースに2連覇

東海大学ソーラーカーチーム 殿 

「ワールド・ソーラー・チャレンジ(World Solar Challenge:WSC)」は、1987年に始まったオーストラリア大陸のダーウィンからアデレード間3,000kmを太陽エネルギーのみを用いたソーラーカーで縦断する、世界最高峰のソーラーカーレース。近年は隔年一度の開催となったこのレースで、東海大学のソーラーカーチームは2009年に日本勢としては13年ぶりの総合優勝を成し遂げ、2011年、総走行時間32時間45分、平均速度91.54km/hで連覇を達成した。
 今大会には、2001年から2007年まで4連覇を達成した強豪オランダのデルフト工科大学チームや、アメリカのミシガン大学チームなど20カ国・地域から37チームが参加。
 前回大会ではシャープ製の宇宙用化合物太陽電池を搭載し、平均時速100.54kmで走行、29時間49分という大会新記録で2位チームに大差をつけての総合優勝を果たす。しかしこれが、今大会からのルール変更という事態を招く。南オーストラリア州の制限速度110km/hに近い速度での巡航に対し、大会ルールとして太陽電池出力を落とすことが検討されたのだ。その結果、化合物太陽電池の搭載面積が6㎡から3㎡に削減される一方、シリコン太陽電池は6㎡のままに据え置かれたため、実質的に化合物太陽電池の採用が困難となった。
 東海大学チームも、高性能の宇宙用化合物太陽電池から住宅屋根用にも使用されているシリコン太陽電池への変更を決めるが、オランダやアメリカなどのライバルチームがアメリカ製の太陽電池を搭載する中、唯一国産のパナソニックHIT太陽電池を採用。リチウムイオン電池も高容量・軽量・安全性を備えたパナソニック製のリチウムイオン電池を搭載。
 また、ボディには東レの炭素繊維「トレカ」を使用し、童夢カーボンマジック社の協力によって、車体重量を160kgから140kgに軽減。ヤマハ発動機のスーパーコンピュータ及びソフトクレイドル社のSCRYU/Tetraを用いて空力解析を行い、4%の空気抵抗低減に成功。さらにミツバのモーター、日本ケミコンのアモルファスコア、ジェイテクトのセラミックボールベアリングを組み合わせることにより、変換効率97%を達成した高効率なダイレクトドライブモーターを搭載するなど、日本のものづくり技術を結集した産学連携によるソーラーカー、2011年型「Tokai Challenger」が誕生した。
 東海大学では、学生が社会的実践力を培う成長の場として「チャレンジセンター」を設置。ソーラーカーチームは、同センターのライトパワープロジェクトの一つで、今大会には教職員2名、女子学生2名とサウジアラビアからの留学生3名を含む学生18名、OB4名にパナソニック及びヤマハ発動機の特別アドバイザーを加えた総勢26名が、10月16日から20日まで5日間にわたるレースに一丸となって臨んだ。
 大会2日目のブッシュファイアーによるレースの中断や、5日目以降の曇天などにより、出走37台中、完走7台という過酷なレースにおける連覇は、東日本大震災による原発事故以降、太陽光発電など持続可能なエネルギーへのシフトを求められている我が国にとって、若い力と日本が得意とするものづくり技術の連携による偉業の達成という日本を元気にする何よりの朗報となった。

 

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優勝を喜ぶ東海大学ソーラーカーチーム

走行中のソーラーカー「Tokai Challenger」

走行中のソーラーカー「Tokai Challenger」

 

 

日本クリエイション大賞2011 マイクロ水力開発賞

次世代エネルギーを担う小さな水車の開発

田中水力株式会社 殿(神奈川県座間市)

温暖化ガスを排出しない自然エネルギーとして、太陽光や風力発電が注目されているが、水力発電もその一つである。中でも、小川や農業用水路、浄水場の送水管などに設置して発電する出力1000kw以下のマイクロ水力発電は、ダム工事などがいらず、環境を破壊しないことから、最もクリーンな再生可能エネルギーとして見直されている。直径30cmの小型水車で、大体、家庭用電力30軒分にあたる100kwの出力があるという。
 従来の水力発電は自然の地形を利用しているため、小規模ではあっても堰や導水路などの土木工事が必要で、土木建築費の大幅な低減が難しく新規建設は非常に限られて来た。
 この様な状況から、田中水力では2000年頃までは新設マイクロ水力の仕事は年1,2件しかなく、またマイクロ水車は名前の通り小型の機械であり、スケールメリットの恩恵を受け難く、機器のコストダウンも思う様な成果が得られず、赤字体質から脱却出来ずにいた。
 そこで、田中水力では新市場の開拓、新製品の開発に乗り出した。目を付けたのは上下水道や工業用水などの既存の送水管を利用する水力発電である。しかし、従来の渦巻きケーシングを持った水車を取り付けようとすると大きな設置スペースを必要とし、配管経路の変更が求められ、工事費用も嵩むという難点があった。
 試行錯誤の末、2006年に開発したのが、円筒形のケースで覆い、既存の配管に設置しやすくした「インライン式フランシス水車」である。送水管を切り取って嵌め込むという大胆な方法によって、建屋も配管のループも必要なく、狭いところでも設置できるようになった。さらに、水量を調整する機構を簡素化し、部品を約半分に減らした。その結果、2~3割のコスト削減につながり、部品点数が少ないため、メンテナンスも簡単になった。このため、開発途上国でも使いやすい。フィリピンのイフガオ州にある世界遺産、コルディリェーラの棚田は保全のための資金がなく、荒廃が進んでいた。2009年に東京電力の援助で、同社の水力発電装置が設置された。水力発電の売電事業の収益が、棚田の保全に使われ、荒れ果てていた棚田が甦ろうとしている。
 小水力発電は、今年7月から始まる再生可能エネルギーの「固定価格買取制度」の対象となり、市場の拡大が見込まれ、大手企業などもこの分野に参入してきている。しかし、同社の「インライン型フランシス水車」は、他社には真似できない技術である。また、水車は、水の落差と水量によって、最適な方式が異なるが、同社の製品は小水力の分野の全ての方式の水車をカバーしているため、さまざまな場所で発電が可能である。
 小水力に適した場所は、日本中に無尽蔵にある。限界集落となっているような山村では、水のエネルギーは使われないままになっている。小水力で売電収入を得れば、農業の再生にも活用できるはずだ。都市の水道でも、現在のように浄水場と配水池の間だけでなく、配水池と各家庭の間の配水管にも設置できるという。
 同社は九州工業大学と共同で、マイクロ水力よりさらに小さいピコ水力(数10kw以下)の開発にも取り組んでいる。高層ビルや大規模施設には空調、用水・排水のための配管類が張り巡らされている。ピコ水力では、こうしたビルを、いわばダムに見立て、その落差を利用するのである。
 水車を使った発電自体は昔からある成熟した技術である。しかし、発想の転換によって新たな市場を切り拓き、世界的な環境・エネルギー問題の解決に役立てることができる。小さな企業の大きな貢献に期待したい。

 

インライン式リンクレス・フランシス水車

インライン式リンクレス・フランシス水車

フィリピンのイフガオ発電所にも水車を設置

フィリピンのイフガオ発電所にも水車を設置

 

 

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