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「ファッションタウン」運動から育まれた、八王子の「交流創造都市」運動
生活文化創造都市推進プロジェクト

生活文化創造都市ジャーナル_vol.6 

 

「ファッションタウン」運動から育まれた、八王子の「交流創造都市」運動

福井昌平氏

(株)コミュニケーション・デザイニング研究所 代表

イベント学会副会長

八王子市 産業振興参与

八王子商工会議所 特別政策委員

 

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「花と緑のまちづくりフェア2017」/写真提供:福井昌平氏

 

 

八王子ファッションタウン運動の特質

 

八王子商工会議所が主体となって、産官学市民協働の「ファッションタウン運動」のスタートとなる「ファッション都市宣言」を1996年に発してから、もう21年目となる。私は縁あって、その前段の基本構想策定段階から参加させていただいているので、八王子のこの運動とは、もう23年間のお付き合いである。

 「ファッションタウン」構想は、グローバルな産業競争環境の中で、日本の繊維産地の生き残りをかけ、〈産業〉〈くらし〉〈まちづくり〉を一体的に捉えて、産業振興とまちづくりと人づくりが連環した繊維産地の活性化運動として1990年代の前半にスタートした。主官は当時の通産省で、そこに国土庁と自治省も連携協力し、一般財団法人日本ファッション協会が窓口となって積極的な地域支援をするという、当時としては三つの省庁を貫く画期的な政策スキームであった。

多くの繊維産地がこの運動に取り組んだが、桐生・五泉・児島・今治等の生産主導型の「小さな世界都市」を目指すタイプと、横浜・神戸・京都などの消費主導型の「質の高い生活文化都市」を目指すタイプに分類することが出来る。実は八王子は、その双方の要素を持ちながら、もっと複雑な要因を内包していた。ご存知のように八王子行政は、1970年代と80年代を通じて、メガロポリス東京の住宅都市としての発展と大学機関の進出ラッシュで、基本的な都市インフラと生活インフラの拡大対応に追われていた。しかしその一方で、繊維産地としての成長力と商業を核とする中心市街地の活性化力には、大きな赤信号が点滅していた。そこで、八王子の歴史的な都市構造の特質と産業構造の発展の特徴を踏まえて、八王子らしいファッションタウン運動の特質を描いたのである。それが『クリエイション×交流・連携』という運動の基本テーマ設定であった。

全てのファッションタウン運動が『クリエイション』の重要性とテーマ設定を行なっていたが、八王子は特に、多様な『交流・連携』の中で育まれてきた都市・産業・文化のコミュニティ形成史の特徴を積極的に生かして、質の高い技術交流や多彩な人材交流が豊かな『クリエイション・マインド』を育むというストーリーの元に、産官学市民協働のファッションタウン運動を追求して来たのである。

 

「八王子花(華)咲きプロジェクト」の持続的な展開力

 

八王子ファッションタウン運動は、産官学市民のクリエイション・マインド育成を目指した「クリエイション・プロジェクト」と、まちに花緑を・祭に華を・市民プライドの華を共に咲かせようとする「花(華)咲きプロジェクト」と、スポーツ・都市間・大学間の交流活性化を目指した「コンベンション・プロジェクト」を推進して来ている。私はこれまで、どちらかと言うと「花(華)咲きプロジェクト」を中心に関わって来た。

特にその中心事業である「花と緑のまちづくりフェア」は、毎年4月の春先に開催され、今年で20回を迎えている。八王子は、生物多様性の山としてミシュラン三つ星に輝く高尾山をはじめ、陣馬高原など、海抜400〜600メートルの山稜が続き、多摩川水系を構成する浅川水系に沿って都市形成が行われて来た。周囲や外縁部は豊かな森や緑に囲まれているけれど、市街地や暮らしの中の花緑文化がちょっと弱く、「まちに緑を、窓辺に花を」のフロリアードの精神をこの八王子に咲かせようという思いで、産官学市民が連携して推進している。特に、2005年からは、中心市街地に近い八王子市立第一小学校の生徒たちが学校ぐるみで参加していて、フェアを飾るシンボル花壇づくりやハンギング花壇作りに積極的に取り組んでいる。更に、フェアを通じて活用した花達を、中心市街地の道路沿いの花壇に植栽し、持続的に水遣りなどして育ててくれている。

また、このフェアでは、花や緑の生産者、花卉販売店者、フラワーアーティスト、ランドスケープデザイナー、中心市街地商業者など多様な主体が参加し、特に八王子市の花屋さんで組成した花屋女子会が開催する「花飾りイベント」は、女性親子の市民参加で大いに盛り上がっている。

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八王子花屋女子会主催の花飾り体験

 

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八王子市立第一小学校の生徒たちの参加プログラム

 

 

こうした20年にわたる産官学市民連帯による「花と緑のまちづくりフェア」の実績が、今年秋(9月16日〜10月15日)開催される「全国都市緑化はちおうじフェア」事業に結実したと言って良い。八王子市は、昨年4月に東京都の自治体で初めて、中核市に昇格した。福祉行政と産業振興行政と都市計画行政が東京都から移管され、八王子市は文字通り自立した地方行政を推進できる自治体と成った。併せて今年は、これも東京都下の自治体では初めて市制制定100周年という記念すべき年を迎えている。その時の中核的な記念事業をどのようにするのかの議論の中で、素直に産官学市民の中から湧き出て来た声が、「花と緑のまちづくりフェア」運動20年の実績を踏まえた国土交通省主催の「全国都市緑化はちおうじフェア2017」の開催誘致だったと思う。

「全国都市緑化はちおうじフェア2017」事業は、「花とみどり溢れる文化的なライフスタイルの体験」をコンセプトに、美しい花と緑が織りなす都市公園環境の中で、花緑の恵みである「食」や「ガーデニング」「アウトドアスポーツ」をはじめとする多様な「学びと遊び」が体験できる「パーク・ライフスタイル」型のフェアを志向するという。メイン会場は、八王子の里地里山の豊かさを体感できる「富士森公園」をメイン会場に、中央地区、滝山地区、夕やけ小やけ地区、南浅川・高尾山口地区、片倉地区、南大沢・由木地区の、八王子を代表する豊かなコミュニティを生かした6つの多様多彩なサテライト会場事業を展開する。

 

「甲州夢街道」事業が生み出した、豊かな地域間交流連携

 

八王子ファッションタウン運動が生み出した、もう一つの大きな成果は、2001年に実施した「甲州夢街道」プロジェクトである。2001年が江戸幕府による五街道等の「宿駅制度制定400年」という記念すべき年である事から、八王子ファッション都市協議会は当初から地域間「交流・連携」のシンボル事業として、「甲州街道」沿線の地域間連携交流事業として計画した。私も本事業のプロデューサーとして関わらせていただいたが、新宿から諏訪まで(甲州街道は、諏訪で中山道に合流される)の沿線各地を結ぶ大事業に挑戦させていただいた。お陰様で、地元八王子管轄の相武国道のお力を借りて、東京国道、甲府国道、長野国道の4つの国道事務所の連携交流に成功し、沿線の商工会議所と自治体の全てが参加する画期的な「甲州夢街道2001実行委員会」の形成に成功した。テーマは文字通り「交流と連携」で、歴史文化を生かした「道づくり・まちづくり」に関わる多くの交流イベントを生み出した。メイン事業は新宿から諏訪までの「甲州街道ウオーク」で、日本ウオーキング協会と各地新聞社との連携協力で、大きな話題となった。

本事業は、八王子の広域連携交流能力の覚醒を生むと同時に、レガシーとしての持続可能なアクション・プログラムを生み出している。その一つが、八王子・相模湖・藤野を舞台とした「甲州夢街道ウオーク」で、関東風景街道19ルートに制定されている。もう一つは、毎年、八王子の中心市街地で開催される「街道市」である。街道沿線各地の物産をはじめとするモノやコトが集まるこの事業は、八王子市民に深く定着している。

 

新産業交流拠点開発と医療刑務所跡地開発を活かした、新しい交流創造時代へ

 

市民総参加で市制100周年記念事業を推進している、今年の八王子。その先に、どの様な夢を描いているのだろうか。その中で、八王子の中心市街地で展開される二つの都市開発プロジェクトが重要だろう。一つは、東京都が推進する東京都繊維試験場跡地に三多摩地区最大のコンベンション施設を構築する新産業交流拠点プロジェクト。もう一つは、医療刑務所跡地を活用した市民のクリエイション・マインドを育むサードプレイスの構築プロジェクトである。その双方にはファッションタウン運動で培われてきた「クリエイション×交流・連携」のコンセプトが生き生きと継承されていって欲しいと、多くの関係者が期待している。

「新産業交流拠点」プロジェクトは、2022年度完成を目指して動いているが、三多摩初の本格的なコンベンションセンターである。大型展示場と大小各種の会議室が構成され、更に八王子初の本格的な都市広場が構築される。既存施設の芸術文化ホールやアリーナー施設を加えると八王子が歴史的に育んできた「B to B 型交流文化」や「B to C 型交流パワー」を、ダブルでさらに活性させるコンベンション機能の完成となる。ハードの建設も大切だが、企画と運営に関わるソフトパワーの育成が重要である。ファッションタウン運動で培われてきた産官学市民協働のパワーを是非、積極的に生かしていただきたいと思う。

医療刑務所跡地拠点開発は、市民のクリエイション・マインドを育む質の高いサードプレイスに構築していって欲しいと願っている。社会教育機関や生涯学習機関の集積を戦略化させるとの方向性は正しいと思うが、市民の内発性を高める大きな視座が必要である。本年開催される、「全国都市緑化はちおうじフェア2017」での市民参加の成果を生かした「市民ガーデニングセンター」の様な、花と緑を生かしたクリエイティブなライフスタイルの発信交流拠点となって欲しいと願っている。

「多様な交流の創造から生まれる、豊かなクリエイション・マインドの育成」を目指した、八王子ファッションタウン運動は、中心市街地に新たな交流の舞台を構築する次のステップへと確かな準備が始まっている。持続可能な八王子の都市発展に大いに期待したい。

 

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全国都市緑化はちおうじフェア2017のイメージ

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全国都市緑化はちおうじフェアのポスター

 

 

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