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まちづくりと景観色彩
生活文化創造都市推進プロジェクト

生活文化創造都市ジャーナル_vol.2

 

まちづくりと景観色彩

吉田 愼悟氏 色彩計画家

 

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日本の伝統的建造物群保存地区の景観―若狭街道熊川宿/写真提供:吉田愼悟氏

 

 

■地域には地域の色がある

1970年代前半、フランスの著名なカラリスト、ジャン・フィリップ・ランクロは、フランス全土の伝統的なまち並みの色彩調査を行い、まちはそれぞれ固有の色彩で構成されていることを示した。このまち並みの色彩調査は、当時パリに開館したポンピドォーセンターで“色彩の地理学”展として発表され大きな反響を呼んだ。伝統的なまちの建物は基本的には地場産材でつくられている。地域の気候・風土に育てられた地場産材がまちに個性的な色を与えていた。「地域には地域の色がある」ことを証明したこの展示会は、その後の日本の環境色彩計画にも大きな影響を与えた。

 

■日本の色

東京は戦災で多くの建造物を失い、その後の近代的な都市計画によってまちの姿は大きく変わった。この変革によって我が国固有の色彩を保持していたまち並みはほとんどなくなってしまったかのように思われる。しかし、個性ある界隈性を色濃く残している地区も残されている。さらに全国を見渡すと戦災を免れ、伝統的なまち並みが保存されている地区も少なくない。このような地域の建造物を多く残している伝統的建造物群保存地区を見ると、「日本には日本の色がある」ことに気付く。これらの建造物は、基本的には地域で産出する自然材を使って建てられており、その地域の気候•風土に育まれた色彩でまとまっている。今日、新建材が流通し、建築物の外装色はほとんど自由に使えるようになった。地域の自然材でつくられたまとまりのある伝統的なまちの景観は、今後の日本の都市が成熟していく上で貴重な指標となっている。

 

 ※写真 日本の伝統的建造物群保存地区の景観-1.若狭街道熊川宿

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■景観法と環境色彩計画

我が国では1880年に入ると混乱したまち並みの整備が始まり、90年代には多くの地方公共団体が、地域の景観形成を推進するために景観条例を策定し、その中でまちの色彩もコントロールする事例が飛躍的に増えた。しかし、地方公共団体が策定する景観条例では、景観形成に向けた法的な根拠がないために、様々な問題を抱えていた。このような問題解決に向けて国は2003年7月に「美しい国づくり政策大綱」を策定し、翌2004年には景観法を公布した。そして2005年6月に景観法が全面施行され、景観行政団体である地方公共団体が定める景観条例(法委任条例)は、景観法を背景に景観問題に対してより大きな役割を果たすことなった。

景観法の第1条には「この法律は、日本の都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り、もって国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする」と書かれている。景観法の施行以降「景観行政団体」の数は年々増加しており、「景観計画」を策定して地域の個性的な景観形成を進めている。この景観法の中で、色彩は景観を構成する重要な要素として捉えられており、地域の色彩基準も多くつくられるようになった。

 

 ※写真 日本の伝統的建造物群保存地区の景観-2.北海道小樽

 

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■生活文化創造都市と色彩

私は色彩を通して、地域の景観形成の推進に協力してきた。まちの色彩は1980年代あたりまでは、きれいな商品パッケージをつくるようなデザイン領域と同様だと考えられていた。お化粧をするようにまちの色をきれいに塗り治せばまちは良くなると思われていた。しかし、私はパリのジャン・フィリップ・ランクロのアトリエでフランスの伝統的なまちの色彩調査を手伝ってから、まちの色は化粧ではないと考えるようになった。まちの色はそこに住む人たちの共同体としての意識が表出したもので、人で言えばお化粧ではなく、皮膚そのものである。地域の気候・風土と協調した、健全なまちでなければ、人々が本当に美しいと感じるまちの色にはならない。そのように考えると生活文化創造都市を実現する際の色彩に関しては、次のような視点が必要ではないかと思う。

 

◇文化を感じる色をつくるためには時間が必要

新しくつくった都市がすぐに文化的な表情を持つことはない。そこに暮らす人たちが協働して、様々な工夫をすることによって、文化的な香りがする都市に育っていく。

◇豊かさを感じる色は自然のリズムと同調している

日本の多くの美しい伝統的建造物群保存地区が教えるように、豊かさの多くはその地域の自然が担っている。機能的で便利な都市ばかりをつくるのではなく、地域の気候・風土と共に暮らすことが必要だろう。

◇創造的な色はつくることよりも育てていくことが大切

これまでデザインは新しさを求めてモノづくりに貢献してきたが、今後、新しさのみで描き換え続けるのではなく、これまでにつくったものをリデザインし、育てていくことが重要視されるだろう。

 

建築物を塗り替えただけでは地域色にはならない。同じように生活文化創造都市も、機能的な施設を整えただけでは本当のクリエーションは起こらないだろうと思う。文化の創造はまちづくりと同じで時間が掛かる。そしてそこにはまちの人たちが共有する暮らしのリズムが必要だ。そのリズムは地域の気候・風土と密接に関係している。機能的で便利な新しい建築物を並べても文化は成熟しない。その地域の気候と親しみ、共存することによって生活にリズムが生まれる。このようなリズムを楽しむことは真新しい都市では起きにくく、長い時間を経て醸成されてきた雰囲気を大切にしている歴史ある都市に利がある。そこでは歴史を大切にしつつ、さらに創造的に文化を再生し続ける。最近よく見掛けるようになった、古い建築物を壊すのではなくリニューアルして使い続ける活動が広まっているのも、真の生活文化創造都市を実現しようとする動きと同調しているように見える。そろそろ日本のまちを成熟させ、地域の気候・風土を楽しみ、無駄な競争をせずに、自信を持って私たちの暮らしぶりを紹介できるようになっても良いのではないか。

 

※写真 日本の伝統的建造物群保存地区の景観-3.日向市美々津

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※写真 日本の伝統的建造物群保存地区の景観-4.京都祇園

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※写真提供:吉田愼悟氏 

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