生活文化創造都市推進事業

生活文化創造都市ジャーナル_vol.4  篠山市のユネスコ創造都市ネットワーク(UCCN)加盟について

堀井宏之 兵庫県篠山市 政策部 部長

 

Hohkabe_shrine_Festival
波々伯部神社おやまの神事(ほほかべじんじゃおやまのしんじ)/写真提供:篠山市

 

1.篠山市について

 

 篠山市は、京阪神の大都市圏からほど近く、電車や車で1時間ほどにあるにもかかわらず、今なお日本の原風景ともいえる素晴らしい景観や豊かな暮らしが残り、農産物、祭礼、丹波焼など豊かで多様な文化と資産をもとに、市民による文化・経済活動が営々と営まれてきました。このような、先人が育んできた「丹波篠山」に込められる食や農の魅力を内外に発信することで、地域ブランドを確立し、ふるさと篠山に住む人、帰ってくる人を増やしたいと考えました。 

そこで、市民・行政が一緒になって「ふるさと篠山に住もう帰ろう運動」を展開し、「幸せは篠山の暮らしの中にある」という新しい価値観をもって、「篠山の時代」をつくろうと動き出しました。

 

2.篠山市の加盟への動き

 

 そうした中で、平成20年の「文化芸術創造都市」として文化庁長官表彰を受け、平成21年には篠山城の築城四00年祭をきっかけとし、市民が主体になって丹波篠山スタイルの暮らしの創造に取り組み、豊かな歴史や文化を後世に承継する創造的なまちづくりを推進することとしました。

 

平成24年には「篠山市創造都市推進委員会」を設置し、創造都市の取り組みを加速させ、平成25年には、暮らしに結びついた産業を育成するなど創造的なまちづくりを推進する行動計画である「篠山市創造都市推進計画」を策定し、農村のよさを更に伸ばしながら、活性化を図るまちとして、「創造農村」のまちづくりを進めてきました。

  この中で、平成26年から篠山が承継・発展してきた景観や丹波焼などの文化的価値の発信や創造都市との交流による篠山文化の向上と、世界の都市への文化的な貢献を目指して、「食と器」をテーマに、ユネスコ創造都市ネットワークのクラフト・フォークアート分野への加盟に取り組んできました。

 

3.加盟申請の取組み経過

 

Tanba-yaki
丹波焼/写真提供:篠山市

 ユネスコへの加盟申請にあたり、7分野のうちどの分野を選定するかが、まず課題となります。分野の選定にあたっては、創造都市推進委員会の中で、議論を深めました。当初、黒豆などの特産物資源が豊富であることから、「食文化」を候補としていましたが、すでに国内の鶴岡市や新潟市が同分野での加盟を目指して取り組みを進めておられたことや、丹波焼などの工芸や祭礼などの資産・産業もあることから、申請についてはその食文化と工芸を中心に、「食と器」というテーマを掲げ、クラフト・フォークアート分野としました。

 

 平成26年3月に初めての申請書を、ユネスコに提出しました。この年の申請にあたっては、申請書以外に、既に加盟しているユネスコ創造都市の同一分野5都市以上の市長名の支援文書を添付する必要があり、それまで全くコンタクトもとっていなかった都市へ、メールや電話、国内の関係している自治体などにお願いをし、苦労して支援文書をいただきました。この年の申請は、初めてのことでもあり、審査結果により、残念ながら篠山市の加盟はなりませんでした。国内では、浜松・鶴岡市の加盟が認められる結果となりました。

 また、様々な機会をとらえて、ユネスコ創造都市ネットワークに関係する国内外の方々に篠山市を知っていただくためのPR活動にも積極的に取り組みました。パンフレットを作成し、篠山市の魅力を発信していきました。

 

特に、平成26年のネットワークの総会が中国の成都市で9月に開催され、市長とともに、総会に申請中の都市として、オブザーバー的な立場で参加することができました。このおかげで、アメリカのサンタフェ市やパデューカ市、韓国の利川市などのクラフト分野の加盟都市の方々とも交流することができ、支援文書をいただいたお礼を伝えるとともに、各都市の取り組みを学ぶ機会も得られました。

 

 そうして迎えた平成27年の申請はユネスコの意向もあり、大きく変更されました。まず、申請書の様式がユネスコの提示する様式に統一され、かつ項目ごとに文字数制限が設けられました。特に、申請の動機やネットワーク加盟の目的、市の資産や文化産業・専門家・博覧会などの内容、ネットワークの指針への貢献や目標に向けた活動、関連分野内での質・量・国際協力の多様性を満たすことの説明が求められるという、レベルの高い内容となり、日本語で文章をまとめ英訳して文字数を確認するという二重の作業となり非常に手間がかかりました。

 

 次に、申請書の内容は、「食と器」を中心に創造性を高め、豊かな農産物である地産食材をさらに生かすため、器(丹波焼など)の新たな可能性を広げ、相乗効果で伝統の革新をはかることや、これらの伝統食材・工芸を継承してきた環境としての自然とデカンショ節や祭礼などの文化行事を維持・発展させることなどにポイントを絞りました。

 

Dekansyo_Festival_(800x659)
デカンショ祭り/写真提供:篠山市

 特に、篠山市として人口4万人の小規模都市である特徴を生かした創造都市モデルを篠山市が海外に提示し、加盟都市や途上国の小都市と共有し、互いに発展する国際的連携を進めること。これらを通じて、地域固有の文化創造力を強化して、食文化の向上と伝統的工芸産業の振興を同時に達成するとともに、地域自然と伝統文化の保全に配慮した地域固有文化創造都市を目指すものとしました。

 

 また、申請書の作成過程において、方向性や考え方についてアドバイスを得るため、6月には市長とフランスのユネスコ本部を訪問し、申請書案について助言をいただきました。並行して、ユネスコ国内委員会への立候補承認の依頼をし、承認決定通知をいただきました。

 

 もう一つ、申請にあたって大きな課題となったのは、平成27年の申請から、①人口10万人未満の都市は申請できない、②2年連続して申請が認められない場合はその後2年間申請できない、③1国3都市しか申請できないという、新しい3つの申請条件でした。特に篠山市にとって問題であったのは、①の人口要件でした。この点については、民族・文化の多様性を第一に守ろうとしているユネスコからすれば人口規模で線を引くこと自体が考えられませんでしたので、文部科学省を通じてユネスコに人口要件の撤廃要望を行いました。また、平成27年の「ユネスコ創造都市ネットワーク会議金沢2015」でも、小規模な加盟都市を中心にユネスコ本部に対して抗議がなされましたが、結果的には人口規模制限は取り下げられませんでした。

 

 ただ、篠山市も含め、平成26年に申請を行っていた人口10万人未満の都市は、27年は特例で申請が認められるという例外措置が設けられ、篠山市はなんとか申請が可能となりました。しかし、これによって、平成27年の申請自体が最後の機会となることがはっきりしました。もう後がなくなったのです。申請期限日のギリギリまで申請書の精度を上げる努力を続け、7月14日ユネスコ事務局へメールで申請書を提出しました。

 

 そして、平成27年12月11日ついに、ユネスコのホームページで篠山市の加盟が認定されました。2回目でありながら最後のチャンスをものにすることができました。夜遅くまで待機していた市長、職員の歓声は忘れることはできません。申請にかかわっていただいた市民や推進委員会、機構、各都市の担当者の皆様などに感謝し、篠山市が世界にも認められたという誇りを強く感じました。

 

4.加盟後の取組みなど

 

 加盟後の取り組みとしては、策定した「篠山市創造都市推進計画」の事業の展開と創造農村の市内、国内外へのPRを推進していくとともに、申請書に記載した「食と器」を中心に小規模都市のモデルとなるように、地域固有の文化創造力を強化して、食文化の向上と伝統的工芸産業の振興を達成していきたいと考えています。

 具体的には、第3回食と器の国際ビエンナーレの平成29年の開催、重要伝統的建造物群保存地区(河原町)を中心に開催される丹波篠山まちなみアートフェスティバルへの支援、丹波焼などの工芸品と食を結びつけるイベントや助成事業、芸術家のネットワークを中心とした職人学校の設立、平成27年4月に文化庁から認定された「日本遺産のまち」と連携した取り組みなど多様な取り組みを進めて行きます。

 

 また、「篠山市創造都市推進計画(H25~29)」が最終年になることから、その改定もおこなうとともに、創造都市ネットワーク日本の幹事市としての活動や創造都市シンポジウムの開催、総会への出席など、クラフト分野を中心に創造都市との交流を進めていきます。

image002

  • mixiチェック
↑