生活文化創造都市推進事業

Creative City’s TOPICS_No.2  「花ざかりの国際芸術祭、2016年秋から2017年にかけてもぞくぞく開催」

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豊島から瀬戸内海を望む/写真提供:無料写真AC

 

9月4日(日)まで、夏会期が開催されている「瀬戸内国際芸術祭2016」。2010年、2013年と3年ごとの開催で今回が3回目となりますが、3月20日から4月15日までの春会期の来場者数は25万4284人(芸術祭実行委員会発表)と前回2013年の同期間より約1割増え、7月18日から開幕した夏会期も8月11日までの中間報告で20万3838人と多くの来場者を迎えています。

瀬戸内国際芸術祭は、瀬戸内海に浮かぶ12の島と2つの港を会場に、「あるものを活かし新しい価値を生み出す」という方針のもと、現代アートを通して、島の生活や文化、歴史などを浮き彫りにしようとする試みです。

2000年から3年に1度開催されている世界最大級の国際芸術祭「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」に始まった、地域におけるアートイベントは、今や花盛りと言えるほど国内さまざまな地域で行われるようになりました。

 

今年秋からも茨城県の県北地域6市町の海と山を舞台にした「KENPOKU ART 2016茨城県北芸術祭」、滋賀県近江八幡旧市街を舞台とした「BIWAKOビエンナーレ2016~見果てぬ夢」が開催され、来年2017年には、長野県大町市で「北アルプス国際芸術祭2017」、千葉県市原市の「中房総国際芸術祭 いちはらアート×ミックス2017」、石川県珠洲市で「奥能登国際芸術祭SUZU2017」、そして「札幌国際芸術祭2017」の開催が予定されています。

 

今年の秋開催の二つの国際芸術祭は、期せずして豊かな自然の中の広大な場所を会場とするものと、歴史ある旧市街地の建物を活用したものとの異なる二つのタイプの芸術祭となります。いずれも瀬戸内国際芸術祭で打ち出されている「あるものを活かし新しい価値を生み出す」という考え方は共通で、「あるもの」が片や海と山という広大な自然であり、片や街中の伝統的建造物群です。

この二つの芸術祭は、KENPOKUが今年初めての開催、BIWAKOが2001年に始まり7回目の開催であること、総合ディレクターがKENPOKUは国際的にも著名なキュレーターであり、BIWAKOは独立系のキュレーターで、このイベントにより名を知られるようになったそれまで無名のキュレーターであるということも含めて、両極端の典型的な取り組みと言えます。来場者数によるものではなく、“成功”の姿も大きく異なると思われます。

 

来年、2017年には、新たに北アルプスと奥能登で新しい国際芸術祭が始まります。総合ディレクターはいずれも北川フラム氏です。また、2014年に第1回を開催し、来年2回目となる中房総国際芸術祭も開催されます。3000m級の山々が連なる北アルプス、日本の最果てだからこそ、日本固有の文化と自然の原風景が残っている奥能登、そして首都圏のいわばエッジにあって、少子高齢化・人口減少の洗礼にさらされつつある中房総・市原市という全く異なる地域資源を持つ3つの地域で展開される国際芸術祭。季節もそれぞれ春、夏、秋という異なった季節での開催になります。それぞれの地域の個性を生かしてどのような芸術祭が展開されていくのか、気になるところであり、楽しみでもあります。

 

 

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札幌国際芸術祭の会場の一つとなる「すすきの」

一方、2017年に2回目の開催となる「札幌国際芸術祭」は、NHKの朝ドラ「あまちゃん」のオープニング曲でもおなじみの音楽家・大友良英氏をゲストディレクターに迎えます。大友氏は、震災後「プロジェクトFUKUSHIMA!」を立ち上げ、「フェスティバルFUKUSHIMA!」を福島はじめ各地で展開してきました。新しい「祭り」の創出に取り組んできた大友氏らしい、参加する前と後では世界の見え方が一変するような強烈な場としての「祭り」を作りだそうとしています。

 

札幌は、国内の他の地域と違って歴史が浅い。明治2(1869)年に開拓使が置かれてから開かれたまちです。“高々”150年の歴史しかありません。しかも開拓のためにさまざまな地域から集まった人々がつくったまちです。奥能登のキリコのように何百年も続く祭りも伝統もありません。だからこそ、市民の心を一つにする新しい祭りが必要なのかもしれません。

大友氏率いる企画チーム「スペシャル・ビッグバンド」が、そして札幌市民が「札幌国際芸術祭」という名の、どのような新しい祭りを作り上げるか興味は尽きません。

 

 

2016年秋~2017年開催予定の国際芸術祭

1.「KENPOKU ART 2016茨城県北芸術祭」

◆会期:2016年9月17日(土)~11月20日(日)65日間

◆開催場所:茨城県北地域6市町(日立市・高萩市・北茨城市・常陸太田市・常陸大宮市・大子町)

◆テーマ:海か、山か、芸術か?

◆主催:茨城県北芸術祭実行委員会(会長:橋本昌 茨城県知事)

◆総合ディレクター:南條史生氏(美術評論家、森美術館館長)

◆作品鑑賞パスポート:一般 前売券2000円、当日券2500円

◆公式サイトhttps://kenpoku-art.jp/

 

<概要>

東京23区の2.6倍に当たる1,652平方キロメートルもの広さのエリアに、約20の国と地域から集結する約100点の作品が展示される日本最大規模の芸術祭。チームラボや落合陽一、日比野克彦、イリヤ&エミリア・カバコフ、妹島和世など80組以上のアーティストが参加します。

風光明美な海と山が織り成す豊かな自然に恵まれた茨城県北地域は、かつて岡倉天心や横山大観らが芸術創作活動の拠点とした五浦(いづら)海岸、アーティストのクリストがアンブレラ・プロジェクトを実現し、世界の注目を集めた常陸太田市の里山をはじめ多くの創造的な地域資源を有しています。また、筑波大学や数々の研究所があり「科学万博─つくば’85」の開催地になるなど、茨城県は日本のアートと科学技術発展の拠点でもあります。自然、科学技術、人間性の統合を可能にするのはアートであるとの確信のもと、地域に根ざした「今ここ」でなければ生まれてこない独自の芸術祭の開催を目指しています。

 

 

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八幡堀(写真はイメージ)
2.「BIWAKO ビエンナーレ2016~見果てぬ夢~」

◆会期:2016年9月17日(土)~11月6日(日)

◆開催場所:滋賀県近江八幡旧市街 10会場

◆テーマ:見果てぬ夢

◆主催:NPO法人エナジーフィールド

◆総合ディレクター:中田洋子氏(インデペンダントキュレーター)

◆パスポート料金:一般 前売券2300円、当日券2500円

◆公式サイトhttp://energyfield.org/biwakobiennale/

 

<概要>

近江八幡旧市街は豊臣秀次により築かれた城下町を基礎として、近世は近江商人発祥の地として発展してきました。江戸期に建てられた町家や工場などが点在する地区は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。しかし市内には、放置された空き町家も多く、取り壊されて駐車場や近代建築に建て替えられていくものも増えています。2001年、そんな現状を打開し、貴重な建物の保存と活用を目指して、国内外より集まったアーティスト達が各々の空間を作品化していったことから始まった「BIWAKO ビエンナーレ」も今回で7回目を迎えます。国内外から65組のアーティストが参加し、今に残された数々の貴重な建物を生き生きと蘇らせます。今回のテーマ「見果てぬ夢」は、かつてこの町に暮らした人々と現代に生きる作家たちの夢の饗宴をあらわしています。

 

3.「中房総国際芸術祭 いちはらアート×ミックス2017」

◆会期:2017年4月1日(土)~5月7日(日)37日間

◆開催場所:千葉県市原市南部地域

◆テーマ:「アート×○○○ 」

◆主催:中房総国際芸術祭 いちはらアート×ミックス実行委員会(会長:小出譲治 市原市長)

◆公式サイトhttp://ichihara-artmix.jp/

 

<概要>

首都圏からほど近い千葉県のほぼ中央に位置し、小湊鐡道のトロッコ列車が走る温暖で自然豊かな地域・市原市。首都圏のオアシスとも言える場所ですが、ご多分に漏れず人口減少や少子高齢化が進み、小学校の統廃合が起こるなど過疎高齢化が急速に進んでいます。首都圏の都市が同様に抱える多くの問題が顕在化しています。その問題を解決し、地域を活性化しようと2014年からスタートした「いちはら×アートミックス」は、さまざまなアーティストが市原の特徴を生かし、「アート×○○○」をテーマに、ワークショップや自然、食べ物、スポーツ、音楽、パフォーマンス、学びなど自由な発想で展開していく現代のアート・プロジェクトです。

 

 

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木崎湖(写真はイメージ)
4.「北アルプス国際芸術祭2017~信濃大町 食とアートの廻廊~」

◆会期:2017年6月4日(土)~7月30日(日)57日間

◆開催場所:長野県大町市全域

◆テーマ:信濃大町 食とアートの廻廊

◆主催:北アルプス国際芸術祭実行委員会(実行委員長 牛越徹 大町市長)

◆総合ディレクター:北川フラム氏

◆公式サイトhttp://shinano-omachi.jp/

 

<概要>

長野県の北西部、松本平の北に位置する大町市は、3000m級の山々が連なる北アルプス山脈の麓にあり、四季折々の景観に恵まれ、古くから塩の道・千国街道の宿場町として知られています。土地固有の生活文化を表現する「食」と、地域の魅力を再発見する「アート」の力によって、北アルプス山麓の地域資源を世界へ発信することを目指しています。

また、北アルプスから流れ出る清冽な雪どけ水の源流に位置し、山麓の扇状地に広がるこの地域は水が生まれる町であり、アートを道しるべに、水という人間、生命の源を体感する旅を提供します。

 

5.「札幌国際芸術祭2017(SIAF2017)」

◆会期:2017年8月6日~10月1日(57日間)

◆開催場所:すすきのエリア/狸小路エリア/円山エリア/札幌芸術の森/札幌市資料館/モエレ沼公園 ほか

◆テーマ:芸術祭ってなんだ?

◆主催:創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会 (会長 秋元克弘 札幌市長)

◆ゲストディレクター:大友良英氏(音楽家)

◆企画チーム:「SIAF2017スペシャル・ビッグバンド」バンドマスター(ゲストディレクター/大友良英氏、調律(エグゼクティブアドバイザー)/沼山良明氏 など

◆公式サイトhttp://siaf.jp/

 

<概要>

2回目を迎える「札幌国際芸術祭」は、ゲストディレクターに音楽家の大友良英氏を迎え、「芸術祭ってなんだ?」をテーマに開催されます。大友氏の考える「祭り」とは、参加する前と後で世界の見え方が一変してしまうような強烈な場を自分たちの手で作りだすこと。これに「芸術」「国際」「札幌」が加わるとどうなるのか、大友氏がゲストディレクター就任以来ずっと考えてきた「芸術祭ってなんだ?」という問いに対する答えを市民・道民、世界中の人々とともに考え、100人100通りの発想を打ち出しながら、お互いに反応しあって「札幌ではこうだ!」といえる、新しい芸術祭を目指しています。

 

6.「奥能登国際芸術祭SUZU 2017」

◆会期:2017年9月3日~10月22日

◆開催場所:石川県珠洲市(すずし)全域

◆主催:奥能登国際芸術祭実行委員会 (実行委員長 泉谷満寿裕 珠洲市長)

◆総合ディレクター:北川フラム氏

◆公式サイトhttp://oku-noto.jp/

 

<概要>

能登半島の最先端に位置し、三方を海に囲まれた珠洲市は北からの寒流と南からの暖流が交わる場所であり、これまでの価値観では“さいはての土地”です。だからこそ、日本の原風景を感じさせる町並みが残り、豊かな里山里海の中で育まれた固有の文化も多く、「奥能登珠洲の秋祭りとヨバレ」に象徴される「祭り」と「食」の文化や農耕儀礼「あえのこと」などの地域文化が今なお受け継がれています。

殊に秋のシーズンには、9月上旬から11月下旬の約50日間、連日市内のどこかの集落で秋祭りが行われ、「キリコ」が担がれます。100基以上のキリコが現存すると言われ、キリコの担ぎ手にふるまわれる「ヨバレ」という風習が、現在でもほぼ全ての祭りで行われ、主人が親戚や友人知人を御膳料理でもてなしています。

今も残る日本文化の源流が湧きいずる場所で行われる芸術祭は、日本文化の原型と最先端の美術が響き合うこれまでにない新しい芸術祭となるはずです。

 

<写真提供>

無料写真素材 写真AC

 

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