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日本クリエイション大賞

日本クリエイション大賞2017受賞案件

今年度選考について
 2017年は、ここ数年の間にきら星のごとくあらわれた日本のスタートアップ企業たちが、その卓越した発想、技術力で存在感を示し始めた年であるという印象を持ちました。
 本賞の選考過程においても、宇宙ビジネス、AI、ロボット、IoT、医療技術などの分野で優れた案件が多く、その起業家たちの若さも十分期待を抱かされるものでした。ただ一方で、めまぐるしく変化する現代、今は優れた技術であっても10年後、20年後にも生活文化を支える技術となり得るかの見極めが難しいと、選考委員会でも慎重に議論が重ねられました。
 
 その中で、2008年創業の株式会社アクセルスペースは、既に3機の超小型衛星を打ち上げたという実績もあり、日本の宇宙ビジネスベンチャーの中で、一歩先んじていることが高く評価され、これからの期待も込めて大賞受賞となりました。同社の衛星をはじめ、宇宙から送られてくるデータは、既に私たちの生活に欠かせないものになっています。
 医療技術の現場では、実は海外の器具や用具が多く使われています。それを一変させ、新たな手術法の確立をも可能にするのではないかと期待されたのが、日機装株式会社と谷徹氏が製品化した「マイクロ波外科手術用エネルギーデバイス」です。患者、術者双方の負担を大きく軽減する点が、選考委員会でも評価され、<医療技術革新賞>を共同受賞されました。
 
 「ジャンルを問わず、クリエイティブな視点で生活文化の向上に貢献し、次代を切り拓いた人物やプロジェクトを表彰対象とする」本賞では、最先端の技術ばかりに創造性を求めているわけではありません。<日本文化貢献賞>のデービッド・アトキンソン氏と<日本の巧みな技賞>を受賞したひだか和紙有限会社は、技術に偏りがちな候補案件の中で確かな存在感を発揮していました。英国人であるアトキンソン氏が、日本の老舗文化財修復会社を率い、日本の観光業のあるべき姿を提唱している。その発言は、特別顧問をつとめる京都の二条城でも大きな影響力をもっています。
 
 <日本の巧みな技賞>を受賞した高知県日高村のひだか和紙有限会社は、社員10数名の小さな会社です。ここで作られている超極薄和紙は、30カ国以上の国々で、文化財の修復に使われています。
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開会を待つ受賞者の皆さん

 いずれも「文化財の保護」に対して、それぞれ独自の視点からアプローチし、優れた実績を残していることから、同時受賞となりました。
 
 宇宙、医療の最先端の技術と文化財保護への貢献という対象の幅広さは、「ジャンルを問わない」本賞の特性を体現したものとなりました。
 今年度は、事務局推薦も含めた121件の候補案件の中から、運営委員によって絞り込まれた43案件を選考委員会に提案。2回の選考委員会を経て、2018年1月の第3回選考委員会で、激論の末、上記の大賞および<医療技術革新賞><日本文化貢献賞><日本の巧みな技賞>が選ばれました。
 
 
 

大   賞

世界初の民間商用超小型衛星を開発
 株式会社アクセルスペース
 
 宇宙ビジネスは、もはや私たちの生活文化から遠い産業ではない。カーナビやスマートフォンに使われているGPSや毎日送られてくる気象衛星からの画像データなど、既に日常生活に欠かせないものになっている。
 アメリカに比べ遅れをとっていると言われるわが国の宇宙ビジネスの中で、超小型衛星の開発で注目を集めているのが株式会社アクセルスペースである。
 100kg以下の規模の超小型衛星の設計開発・製造・運用およびそれらの衛星から得られる画像データ提供を中心事業とする、2008年創業の東京大学発のベンチャーで、2017年7月までに合計3機の衛星の打ち上げに成功した。

 大学発の独自技術をゼロから発展させてきた同社の強みは、世界的に見ても圧倒的なコスト競争力にある。従来の大型衛星は数百億円かかると言われているが、その1/100程度の1機数億円という低価格を打ち出した。しかも5~10年かかっていた開発期間を2年程度にまで短縮させた。衛星の設計開発は顧客のニーズに応じて行い、世界最大級の民間気象情報会社ウェザーニューズからの発注を受けて打ち上げた「WNISAT-1」(2013年11月)「WNISAT-1R」(2017年7月)は、海氷・台風観測の他に測位衛星の反射波を利用して地球表面の状態を観測するGNSS-Rミッション等も行っている。
 2016年には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とも「革新的衛星技術実証プログラム小型実証衛星1号機に関する契約」を締結し、衛星の設計開発・製造・運用までのすべてを受注した。この衛星は、2018年度に強化型イプシロンロケットによって打ち上げられる予定である。
 そして今、同社が目指しているのは、2022年までに自社の衛星50機によって、人間が経済活動を行う地球上のすべての領域を毎日観測する地球観測網「AxelGlobe」の構築。これにより、世界の“今”を記録するデータが毎日更新され、過去から蓄積してきたデータと比較することで今後何が起こるかを予想することも可能になる。これらの情報は、農業や森林保護、海洋監視、局地気象予報、都市開発などから経済動向把握まであらゆる分野に活用することができ、新たな宇宙利用を切り拓くプラットフォームに成長するだろう。
 宇宙から、地球を、地球に暮らす私たちの営みを観察することで何が見えてくるのか。超小型衛星群が築く宇宙時代のインフラが拓く未来に期待したい。
 

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株式会社アクセルスペース 代表取締役CEO中村友哉氏と
超小型衛星1/2スケール模型

2022年までに打ち上げ予定の衛星「GRUS」。50機によって地球観測網「AxelGlobe」を構築する

2022年までに打ち上げ予定の衛星「GRUS」。
50機によって地球観測網「AxelGlobe」を構築する

 

 

 
 

医療技術革新賞

 
優れた止血能力を持つマイクロ波手術用エネルギーデバイスを製品化
 
 日機装株式会社
 谷 徹 氏(滋賀医科大学バイオメディカル・イノベーションセンター 特任教授)
 
 今日、外科手術では高周波電流を流し、そのときに発生する「ジュール熱」を利用して、止血(凝固)しながら組織を切る「電気メス」が多く使われている。しかし電気メスには高温での焼灼によって生体組織に熱損傷を起こし、煙やミストを発生させ術者の視野を遮るなどの課題があった。
 電気メスの誕生からおよそ100年、外科手術のあり方を大きく変えるデバイスが誕生した。滋賀医科大学バイオメディカル・イノベーションセンターの谷徹特任教授が開発した、高効率のマイクロ波技術を応用して、日機装株式会社が製品化したマイクロ波外科手術用エネルギーデバイス「アクロサージ」である。
 マイクロ波は電子レンジと同じ波長域の2.45GHz(ギガヘルツ)のエネルギーであり、生体内の水分子にのみ直接作用し、分子運動によって熱エネルギーを得る。マイクロ波を照射された部分の生体の内側と外側の水分子がほぼ同時かつ均一に運動し発熱するため、外側を目視することで内側の状態を判断できる。外から熱を加えることと違い、生体自身の発熱による作用であるため、生体組織に必要以上の熱損傷を引き起こすことはない。また、焼灼しないため煙やミストの発生を抑えることができ、手術中の術者の視野を保つことができることは手術の効率化にも大きく寄与する。
 今回開発されたハサミ型のデバイスは、マイクロ波作用部に通常のハサミと同様に刃が備えられているため、優れた止血能力があるだけでなく、生体組織の剥離・切開も可能であり、止血・脈管シーリングと合わせた手術操作一連のほぼすべてを1本のデバイスで可能にし、手術時間の短縮をもたらす画期的なデバイスなのである。これによって患者・術者双方の負担は大幅に軽減される。
 現在は、開腹手術用のデバイスのみが2017年1月から販売されているが、昨今注目される腹腔鏡手術用など多様な形態のデバイスの製品化も予定され、「アクロサージ」は、これまで海外のデバイスに頼っていた日本の外科手術の現場を大きく変えるに違いない。
 

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「アクロサージ」のハサミ型デバイスとジェネレーター

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谷徹氏

 

日機装株式会社 木下良彦取締役(右) 浅野拓司市場開発部長(左) 高田正人市場開発リーダー

日機装株式会社
木下良彦取締役(右) 浅野拓司市場開発部長(左)
高田正人市場開発リーダー

 

 

 

日本文化貢献賞

 
文化財修復会社を再建し、観光立国日本を説く
 
 デービッド・アトキンソン氏  (株式会社小西美術工藝社 代表取締役社長)
 
 イギリス生まれのデービッド・アトキンソン氏は、かつて米大手証券会社ゴールドマン・サックスで、日本の不良債権の実態を暴いた著名なアナリストだった。
 2007年42歳で退職後、軽井沢の別荘で過ごしていたとき、1636(寛永13)年創業の文化財修復会社・小西美術工藝社の先代社長と知り合う。同社は、業界最大手であったが、その経営は危機的状況にあった。
 2011年、先代社長から経営の立て直しを託され、社長に就任。現場の経費を細かく把握せず、施工が終わってから赤字が判明するなど、職人集団にありがちな大雑把な経営に改革のメスを入れた。
 就任直後、補修を担当した大阪・住吉大社で塗装がすぐに剥げ落ちる大問題が発生。就任前の工事が原因だったが、アトキンソン氏は謝罪を何度も繰り返し、修復のやり直しにこぎつけた。最大手の看板をいいことに、レベルが低下していた職人集団そのものの改革にも着手した。
 ベテラン職人の高額だった給与を引き下げ、非正規だった職人をほぼ全員正社員にし、しっかりした研修も行う。新入社員も毎年採用し、社員の平均年齢は46.3歳から35.2歳に若返った。
 それまでの慣習のすべてを見直す改革に対し現場には不安が広がったが、「何をするにも反発は出る」と徹底的に断行。すると、以前はなかった定期昇給が行われるなど、職人たちにも負担ばかりでなく、プラス面もあることが浸透してきた。
 現在、同社には60名を超える職人が在籍し、全国の建造物国産漆塗のシェア約60%。春日大社、日光東照宮陽明門など日本が世界に誇る文化財を修復している。
 アトキンソン氏が立て直しに取り組んでいるのは、同社だけではない。著書『新・観光立国論』や『国宝消滅』などを通じて、観光業を日本の産業の柱の一つとし、文化財をしまい込むのではなく、観光業の重要な資源として位置付け、活用していくことを提唱。二条城特別顧問として、約100億円必要とされる大修理に対し、二条城そのものを観光資源として最大限活用するよう提言し、現在ではさまざまなイベント開催も実現されている。
 
 

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デービッド・アトキンソン氏

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2017年3月、44年ぶりに竣工となった日光東照宮陽明門。
小西美術工藝社が改修工事を担当

 

 

日本の巧みな技(わざ)賞

 
文化財の修復に欠かせない世界一薄い和紙の開発
 ひだか和紙有限会社
 
 和紙の原料「楮」の産地である高知県で、1949(昭和24)年に輸出典具帖紙協同組合として創業したひだか和紙有限会社は、今も同県日高村で和紙製造一筋を貫いている。
 創業当初は、提灯紙、手漉きの典具帖紙、タイプライター用原紙等を製造し、国内に販売していた。その後、和紙需要の増大に対応するため機械メーカーと共同で機械漉き技術を開発し、1969年、懸垂式短網抄紙機の1号機を誕生させる。手漉きの手技を長年の研究と努力の末に、機械漉きの技術に移し換えたのである。
 ところがその後、和紙需要は低迷、新たな和紙のニーズを求めて、同社5代目社長となった鎭西寛旨氏が若手社員らと取り組んだのが、極限まで薄い和紙づくりであった。2013年、2年がかりで厚さ0.02mm、1㎡当たりの重さ1.6gと世界一薄く、丈夫な機械漉きの和紙づくりに成功。手漉きに比べ機械漉きでは、ある程度薄い和紙の製造が可能だが、最初は3~4gが限界だった。薄すぎて穴があいてしまったこともあったが、機械のスピードや原料の濃度の調整を重ね、徐々に薄くしていった。
 もう一つこだわったのが塩素を使わないこと。オリジナルの漂白技術によって、中性の未晒に近いpH7の弱アルカリ性を実現。白くて黄ばみや変色しにくい和紙ができあがった。
 鎭西氏が、この和紙の販路として新たに開拓したのが、文化財の修復である。木材パルプから作る洋紙でつくられた本は、酸性のインクや湿気で和紙に比べると劣化しやすい傾向にあるが、印刷した文字が透けて見えるこの和紙を貼り付けて補強すると、現物に近い形で長期の保存が可能になる。アメリカに留学経験のある鎭西氏が、海外の文化財保存修復学会の会場などに足を運び、この日本古来よりの修復技術と、同社の極限まで薄い和紙を使った技法が古文書や古書、仏像、絵画の修復に適することを地道にアピールしていった。今では国内だけでなく、大英博物館やルーブル美術館など世界30カ国以上で絵画や書物などの文化財修復に使われている。
 「欧州の文化財を守るエンジニア」と評される鎭西氏が目指しているのは、世界中の文化財の修復。高知県日高村の小さな会社が世界の宝を守っているのだ。 
 
 

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世界一薄い機械漉きの和紙

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30ヵ国以上で絵画や書物の修復に使われている

 

 

 
 
 
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